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【星と月の女王】
知っているか。ネオネコジマの夜を統べる、雲間切り裂き駆けるあの流星を。煌々と灯るあの月を。
「へえ、なるほど。噂どおりの美貌だね」
尊大に胸をそらす青年の瞳にもまた星と月はきらめく。あるいはVIPルームに咲く、鮮やかなる花二輪。またあるいは、どこまでも純粋に透きとおる、磨き上げられた宝石たち。
「それはどうも。お褒めにあずかり光栄だわ。ね、さゆる」
「ええ……そうね、じゅん」
星も月も、暗澹たる夜にあってはまばゆき道しるべとなろう。意外なことに、高尚を自負する男たちが深き夜の社交場、『プロムナード』の最奥に位置するこの部屋をたびたび尋ねるのは、彼女らの彫像か絵画めいた肢体の味わいを堪能するためではない。道しるべだ。それこそがこの場にあってただひとつ、価値を持つのだ。
「それで? あなたはなにを望むの? 少なくないお金を積んでここにいるんでしょ、あなたもさ」
「あたしたちに、なにを導いてほしいの……?」
ゆえに、男の罪は無知蒙昧なことではない。
「ま、それは後にして……今は楽しもうじゃないか? そのためにおれを部屋まで誘ったんだろう? くくっ、好きものがふたり、さてどう楽しもうか……」
「あ~、はいはいはいはい。ストップストップ。は~、シラけるなあ」
男を遮り、夜を流れる星のひと筋、
姫木 じゅん
は呆れたように手のひらを返す。
「つまんないヤツ。お決まりの反応、お決まりの思考回路」
「なっ……」
目を丸くし、口をあんぐりと開け呆けた男へ、
朝鳥 さゆる
は肩をすくめた。言わずもがな、夜闇をあまねく照らす月が来訪者へ授けるのは、一時の肉欲の解消などではない。
「なんだと、てめえ! 男をとっかえひっかえ引っ張り込んじゃお楽しみなんだろうが。金が欲しいんだろ、金ならくさるほどあるぜ? 分かったらさっさと服を脱いで、おれの前にひざまずいて……」
ぱちりと鳴らす指に、さゆるのさしたる感情もこもらない。このような輩は物珍しくもないものだ。すぐにも扉が開き、黒ずくめたちがずかずかと割り込んでは男を羽交い絞めにする。
「な、なにする、てめ、おいっ! おれはゲストだぞ、VIPだぞ!」
「5人にひとりは、あなたのようなカン違い男がくる……あたしたちのほしいものは、あなたなどには決して支払えない。決してね」
喚き散らしながら男が引きずられてゆくと、あとにはまたたくふたりの美貌だけが残された。
「……ぷっ」
「ふふ……」
「見た? あいつの顔! 情けないったら!」
「近頃はああいうのが増えたわね。支配人にはもう少し、人を見る目というものを養ってほしいわ……」
「お人好しだもの、しょうがないわよ」
静寂を照らす星と月は優雅にフリルを翻す。戯れに踏むステップはやがて溶け合い、ふたりはついばむようにキスをした。
男の罪は無知蒙昧ではない。しるべが輝くのに気づかぬは愚かながら責められることもない。男の罪は、天上の手の届かぬ光へ手を伸ばそうとしたことだ。
「ところでその支配人だけれど、今朝はなんだか緊張していたみたいね」
「ああ。聞いていない? この後にやってくる、あたしたちの次の客」
「聞いていないわ。興味がなかったから」
「まったく、さゆるは。そっけないのね。そこが愛おしいのだけど」
首元へ唇を這わせながらにじゅんは告げた。
「
中沢 リッカルド
市長。二度目の来訪かしら? 今回もまたご大層なお題目を抱えているみたいよ。ネオネコジマの行く末は、だとか未来がどうのだとか……」
「やあやあ、おふたりさん! 今夜もお美しく。お邪魔いたしますよ」
無遠慮な態度でやってきたが、件の市長の根は紳士だ。決して力弱き者に手を上げたりはしないし、理性的で己をわきまえていて、街のいたるところに監視カメラと盗聴器を設置し、市民の安全確保にだって務めている。ひとえにネオネコジマへの愛の賜物、と本人の談である。
慇懃な一礼から一転、さゆるは半ば挑むように超然と男を見据えた。
「お尋ねしたいことは? 市長さん」
「前回はどうやら、あたしたちの占いが当たったみたいね」
「占いなどと、謙遜を。あなたがたの見識と導きが、我がネオネコジマを天上に煌めく都へと押し上げたのだ!」
夜を統べるとは比喩ではない。血液がごとく街へ巡る情報は、夜を媒介として醸成され、やがて昇華へいたる。ならば街において勝者となるのは? 情報を手のひらで弄ぶ者だ。
巡る血液をその身に受け、濾過し、還元するならばそこらの情報屋とてそう変わりはすまいが、じゅんがたたえる知識は誰にも比肩せず、さゆるに芽生えた才は政界、財界、あるいは芸術など多彩な分野において、類まれなる先見の明を発揮した。
「今ふたたび、ネオネコジマを天上のその先へ! さすれば我が冠上にて、一対の流星と月はひときわにまばゆく輝くことでしょうな」
「ええ、商談成立ね」
街のすべて、手のひらの上で操ってみせる、その悦楽と伴うスリルこそがふたりの求める対価なのだ。
「それじゃ、密談とまいりましょうか? 市長さん」
「あたしたちの腕の見せどころね。じゅん」
「ふふっ、燃えるわよ、さゆる!」
この夜を境にネオネコジマはさらなる輝きを増し、照らす天上の星と月はその明るさにも劣らぬほどに灯り続けたという。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
コメディ
SF・ファンタジー
NPC交流
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2026年05月03日
参加申し込みの期限
2026年05月10日 11時00分
アクション投稿の期限
2026年05月10日 11時00分
参加キャラクター一覧
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