【星幽塔】グリフィンレイク王国物語～かわいいって言ったら負け｜リアクション

【星幽塔】グリフィンレイク王国物語～かわいいって言ったら負け

（あぁ、また星幽塔の夢？）

　先程まで学校に居たはずなのに……水上桜はかぶりを振って、辺りを見回した。
　周りの人々は、ＲＰＧに出てくるような板金鎧姿や、とんがり帽子にローブ、杖を持っていたりする。走り回る子供を見つけたかと思えば、猫耳と尻尾が生えているのだ。

「グリフィンレイク王国、お仕事に登録された方は、こちらのグリフィン乗り場にお越し下さーい！」

　Ｂａｒアストラルの店員の声に、グリフィンなんている訳が無いと思ったのだが。
　歩く桜の視界に、紛う方なきファンタジーが現れて絶句した。
　頭部と前足は鷲のそれ、体と後足はライオン。金色の眼光は鋭く、背の翼は今にも空を駆けんと広げられている。

「あぁ、乗り場はあちらですよ。グリフィンの引っ張る籠にどうぞ」

　店員の案内で階段を降り、首に提げた登録証とやらを確認されて籠に乗り込んだ。
　二頭いる彼らのお腹には鞍と頑丈なロープがつけられている。
　籠には他にも耳とへそにピアスをした女性も居た。彼女も登録したのだろうか。

（なぜ私はグリフィンの子守をすることになっているの？　いつの間に？）

　桜の歯ぎしりをよそに、グリフィンは甲高い鳴き声を上げて飛び立った。

◆

　ティオレ・ユリウェイスもまた、Ｂａｒアストラルでグリフィンの子守に登録していた。
　最近は遺跡発掘の仕事がなく、何かしら金を稼がねばならないところだったからだ。
「今年もそんな季節が来たんだねぇ」
　グリフィンの赤ちゃんという言葉に時の移ろいを感じつつ、臨時に設置された乗り場へと歩く。
　途中で、クロスボウを持った黒髪黒瞳の少女が、グリフィンを見て口をぽかーんと開けている場面に遭遇。

（初めて見たのかねぇ……）

　初々しい反応に少し微笑ましくなってしまう。ティオレにも初めて見るものに対して驚いていた頃があったはずなのだが、人生がそこそこ長いと思い出せない。
　グリフィンの引っ張る籠に乗り込み、いざ王国へと出発するその時。
　少女が小さく『ぐぬぬ……』と歯ぎしりするのが聞こえた。

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