【星幽塔】グリフィンレイク王国物語～かわいいって言ったら負け｜リアクション

【星幽塔】グリフィンレイク王国物語～かわいいって言ったら負け

　ラッセルと晴月は三頭の赤ちゃんを連れて、小屋の外に設けられた運動場へとやってきた。

「よーし、遊びがてらカナリアに変身して、飛び方の練習でもすっかな」
「そうだね、この子達は他の子に比べて少し体も大きいし」

　ラッセルは『ピヨコ変化』でカナリアに変身すると、ピーピー鳴き、地面を歩いてから飛び立ち、ぐるりと旋回するまでを実演してみせる。
「じゃあみんな、先生に続いてやってみようか」
　晴月の言葉に従って、三頭は運動場の木によじ登り、羽ばたいてラッセルの元に降りてくる。

（ん？　何だかみんなの目がやけにギラギラしてるな……）

　鷲とライオンの体を併せ持つグリフィンが、カナリアに向ける眼差しとなれば――

「もしかして、獲物に向ける捕食者の目なの！？」

　木の上から、鷲のかぎ爪が迫る。
　地面に降りれば、ライオンの足でジャンプして嘴の襲撃。

「はいはい、飛ぶ練習よくできました！　ご褒美ですよー」

　ラッセルのピンチにすかさず晴月が割って入り、赤ちゃんたちにおやつの小骨を差し出すと、幸いにも食いついてくれた。

「ふー、サンキュー、晴月」
「どういたしまして……あれ？　ラッセル、あそこに誰かいる？」

　人の姿に戻ったラッセルが、晴月の指さす先に目を向けると――王城の屋根上に、黒い塊が二つ見えた。

◆

（た、高い！）

　近場の窓から、屋根の上に乗り出した想花だが、ヘタレとビビリに襲われて固まっていた。
　仕事の説明もそこそこに王子がロイを捜しに行ってしまった後、使用人には「月原さまはどうぞこちらでおくつろぎ下さい」と新しいお茶を入れてもらったものの、居たたまれずに部屋を出た。

　そこで、窓の外にグリフィンの赤ちゃん――多分ロイだろう――を発見してしまったのだ。

（よくもあんなフラフラと、眠りながら歩けるなぁ）

　何とかロイに追いついても、捕まえようとする想花の手をするりと躱してしまい、そのまま屋根を落ちそうになって――戻ったりの繰り返し。

「ちょ、そっちは行っちゃだめ！　戻ってきて！」

　ついに屋根の端まで到達し、小さな足が踏み外した、その時。
「おっと危ない！」
「間に合って良かった～」
　鷲に変身したラッセルと、晴月が空を飛んでロイをキャッチしていた。

「え？　えええ？」
　驚きのあまり足を踏み外した想花はというと――
「月原さん、掴まって！」
「ひゃい！？」

　成獣のグリフィンに跨がった王子の手を取り、鞍の上に引き上げられて事なきを得た。
「うわぁ、ぼく、空を飛んでいる……」
　吹きつける風は冷たいが、快晴の空を舞うグリフィンはなかなかどうして、絵になるものだ。
「どうだい？　僕の育てたグリフィンはかっこいいだろう？　しばらく空の散歩を楽しむか？」
　王子は得意げな顔だったが、つい下を見てしまった想花は身を震わせて頼んだ。

「ごめんなさい、高いところは怖くて……地面に下ろして下さい」

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