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寝子島高校
色なき風に思い重ねて
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キャンバスに色を乗せる。まぜこぜの泥が出来あがった。これは違うと鮮やかな青に緑にと塗ってみる。これは何だ沼かヘドロか。おぞましい怪物の吐き出す深淵の闇か。
桜井 ラッセル
の筆は重くぎこちなく精細を欠いた。気分が乗っている時はあれ程に多様かつ迸るように色彩が溢れ出るというのに、近頃の発想の欠如はいかんともしがたい。打開を試みるべく様々な色をパレットへ展開しキャンバスへと塗り重ねてみるも、ラッセルの胸に黒くじんわりと熱くのしかかる焦燥は晴れなかった。
「くそ」
自分以外誰もいない部屋へ思わず零れた悪態は壁の染みに吸い込まれて消えた。
「はあああ……なーんも上手くいかねーな」
絵画、音楽、小説。写真に映画に……芸術を志す者とスランプの関係は切っても切れない。どんなに輝かしい功績や作品に恵まれようとも常にその影に潜み取って代わる隙を狙っている。少しでも気を緩めようものなら浮上し宿主の精神もろともに乗っ取らんと画策するのだ。今まさにラッセルを迷わせているように。
モチーフとしたのは寝子島の雄大な自然。九夜山の中腹から望む街とその向こうに広がる海の深い青だ。何にも侵されざるブルーを主題と据えたかった。海はいい、それに青空もいい。心洗われるような、目の覚めるような青だ。それをキャンバスへと描き出すのだと意気込み筆を持ったものの、しかし筆先は心地良く走ってはくれなかった。
「くそ~……」
唯一つの作品にいくらでも時をかけられるならば悩むところもない。しかし創作とは得てして時間制限との戦いでもある。つまり提出期限や納期だ。今のラッセルの場合は来たる『全日本学生美術コンクール』がそれに当たる。プロとは渾身の一作を生涯かけて練り上げる者ではなく求めに応じて与えられた期間の内に作品を仕上げ手渡すことができる者をそう呼ぶのだ。ラッセルは学生だがそんなプロ意識を今からでも理解しているし、何より湧き上がる創作衝動やイメージの数々を形にしたい欲求があった。今こうして煩悶しちっとも形に表わせないのは技巧の欠如がためか。それとも情熱の問題なのか。いずれにせよキャンバスに生まれたのはラッセルの作りたかったものとは程遠い、彼の心中を如実に反映したような黒い何かでしかなかった。
「俺……才能ねーのかな」
口にするもそんな言葉は所詮言い訳に過ぎないと分かっている。才能云々などと……ラッセルはまだスタートラインにさえ立っていないのだから。創作で名を売る者は誰しもが魂を削りながら絶えず情熱を燃やし続け、苦しみの中に光明を見い出していくものだ。例外はない。楽をして日の目を見る者など唯の一人もありはしないのだ。誰しもが生涯、求める高みへ届かぬ苦しみとひとまずの達成の喜びを繰り返しながらに少しずつ、一歩ずつ歩んでゆくものなのだ。
何かが定まらない感覚があった。ぱちりとはまらない。パズルの正しいピースを埋めてゆくような感覚に欠けている。己の心に納得が無ければ何も成すことなどできないだろう、殊にクリエイティブな物作りなどはそうだ。心が迷えば筆も迷う。目指す一点がぴたり定まらねばどこへ向かって研鑽すれば良いかも分からない。
「俺は……どうしたいんだろうな」
己の納得ゆく作品を生み出したいのか。コンクールで賞を取りたいのか。それとも、鎬を削るクラスメートたちの鼻を明かしてやりたいだけなのか。
くそ、ともう一度つぶやく。
しばしの後もう一度筆を取り、色を乗せ、手を止め、再び走らせる。幾度も幾度も繰り返す。少しずつ逡巡の時が縮まり、筆が色を乗せ迸りはじめる。これはいけると確信した途端にやはり止まり、くそうと吐いた。
それが創作の正しい姿とも言えよう。容易く生み出された色彩が他者の心を掴もうとは思えない。今は猫も杓子もAIだ何だと騒いでいるが、苦しみ感じぬ機械にこの色が出せるものか。感動によって創造に深みを与え、苦しみによって感性を磨き上げるのだ。
そんなことを考えながらにその内ひどく没入し、ラッセルは無心に筆を振りたくっていた。
「……うわ!?」
気が付くと
晴月
が傍らの椅子に腰かけラッセルを眺めていた。何が楽しいやらにこにことして、飽きずに随分と長いこと見つめていたらしい。
「こ、声かけろよー!」
「だーって、すっごい集中してたからさー。邪魔しちゃ悪いと思って!」
彼女の買ってきたコンビニ弁当で一休みとする。レンジにかけるとかけられたフィルムがぱんぱんに膨らんで、温まり過ぎたから揚げがちょっとばかり破裂していた。
「海?」
「え?」
「この絵。キレーな青だね」
弁当のついでに買ったという助六寿司のいなりを頬張りながら、不思議なことに彼女はそう言った。ラッセルとしては全く持って得心のゆかぬ野暮ったくてぼやけた青なのだが晴月はどうやら気に入ったらしい。というより海を描いたと分かってもらえるとは思っていなかった。
「……キレーかな?」
「うん! 何かね、胸がすーってする感じ」
「すーっ、て?」
「すーっ、だよ。気持ちいい感じ」
なるほど。すーっ、か。何かがすとんと腑に落ちた。我ながら簡単なものだと苦笑いする。恋人が口にしたそんな曖昧な言葉で何やら悟った気になれるとは。
「うっし。これ食ったらもう一頑張り、してみっか!」
「うん! わたしも完成が楽しみだな~」
何だっていい。世に謳われる巨匠とて恋に愛のエピソードなど絶えないではないか。案外彼らもそんな単純な言葉一つで上向いたり、歴史的な名画や名著を生み出す端緒としたのかもしれない。
窓の向こうの晴れ空と広がる青海にキャンバスが重なる。パズルのピースがぱちりと埋まる音がした。
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あとがき
担当マスター:
網 透介
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網です。
アンニュイな気分になったりしつつフリーなお話でした。
秋ですね。秋だったはずです。秋は一体どこに行ってしまったのでしょう。寒い。
皆さん風邪を引かないようにお気をつけて。寒暖差が辛い。
でも寝子島ではもう少し秋らしい秋を楽しんでいたいところです。
それではまた次回に。
網でした。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
網 透介
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
NPC交流
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2025年11月05日
参加申し込みの期限
2025年11月12日 11時00分
アクション投稿の期限
2025年11月12日 11時00分
参加キャラクター一覧
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