ONE DAY クルーズ｜リアクション

ONE DAY クルーズ

◆華やかな船の上で

　綾辻綾花は早川珪先生とともに星ヶ丘を訪れた。
　目的はイソラ・ガレッジャンテから出航するクルーズ船『ニャンタマリア号』だ。すでに停泊していて、乗船の受付を始めている。クルーズには時間帯の区分があり、２人が乗るのは夕方からのサンセットクルーズ。タイミングを考えると船の上にいるころに日が沈み始める。

「いい天気ですね。これなら夕日もきれいに見れそうです」
「ああ、楽しみだ」
　　
　期待を胸に２人は乗船手続きを済ませた。そして出航の合図とともに船がゆっくりと発進する。少しずつ寝子島から遠ざかるのを眺めたあとは船のなかを散策する。

「すごく綺麗ですね」

　さすがは豪華客船といったところで、ホテルのような煌びやかさに圧倒されそうになる。今回の乗船料金は短時間プランだからか、お手頃価格に収まっている。

（こういう機会が無いと、なかなかできない体験かもしれないです）

　大きく揺れることもなく、気づけば船はだいぶ島から離れた。珪先生は彼女が船酔いしてないか度々声を掛けた。そういう優しさはどこでも変わらない。
　再び外に出ると風が少し冷たい。空を見ればだいぶ日が傾いている。そっと珪先生の腕に手を回して寄り添うと、彼も綾花を受け入れた。

（暖かいです）

　幸せを抱えながら２人で水平線を眺める。海に溶け込むような夕日はとても幻想的だった。そしてそんな夕日に照らされる珪先生が綺麗で、綾花は見惚れていた。

「こんな風にゆっくりと時間が過ぎるのも良いですね」
「そうだね」

　見つめ合うと自然と笑顔になる。そのまま徐々に夜へと変わる空を眺めていた。やがて船は折り返して寝子島へ向かい始める。寝子島の建物にぽつぽつと明かりが灯る。

「こんな大きな船に乗って日本一周も行ってみたいですね」

　珪先生は綾花の言葉に頷いた。彼と一緒に行けるならどこでも楽しい旅になる。彼女はそんなことを思いながら、２人で船を降りた。

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