ONE DAY クルーズ｜リアクション

ONE DAY クルーズ

◆クルーズと１分スケッチ

　旅鴉月詠はイソラ・ガレッジャンテへ赴くと、クルーズ船『ニャンタマリア号』の姿を捉えた。目的は数時間程度のプチクルーズで、今回はランチクルーズで参加する。乗船手続きを済ませたが、まだ出航まで時間があるので船内をうろつく。

「なに、出航してしまうと『船そのもの』などなかなか見ないものだよ」

　ひとたび船が走り出すと流れていく景色に注目するあまり、乗っている船のことを忘れてしまう。だからこそ今のタイミングが船そのものを満喫できる貴重な時間ともいえる。月詠は備え付けの非常案内図に目を向ける。

（今回は客室には用なし。トイレの位置だけ覚えておこう）

　街中を観光するような足取りで彼女は船内を探索する。食事会場の場所と食事の開始時間を確認。それから非常用のボートも覚えておく。

（万が一のことは考えておくものだ）

　そうならないに越したことはないが、念のため。つい探索が興に乗ってしまい、思わず立ち入り禁止を超えそうになる。

（おっとこの先はスタッフオンリーか、邪魔したね。安全航行をよろしく）

　きっとその奥にいるであろうスタッフに敬意を表し、その場を後にした。いよいよ出航時間になり、乗船口に戻る。陸のほうを見ると、船を見送るだけの人も意外といる。それを彼女はさっと１分スケッチし、手を振る名も知らぬ誰かさんたちに手を振り返す。
　旅立ちの雰囲気を満喫した彼女は先ほど確認した食事会場を目指す。今回の食事はランチビュッフェで彼女は開始前から並んだ。ドアが開かれるとまずはウェルカムドリンクとしてノンアルコールの葡萄ジュースをいただく。そして窓際の席を確保すると、そこから穏やかな海の景色が見える。

「いい席だ」

　改めて席を立つとイタリア料理から少しずつ料理を皿に移す。全てが映えるよう盛り付けを丁寧に芸術的に、かつ前菜からデザートまでバランスの良いプレートを仕立て上げる。そして１分スケッチしてから頂く。
　さすが豪華客船のランチというべきか、上品な味わいがある。それを堪能した後は甲板に置かれたチェアで海風を受けながらスケッチを仕上げていく。カモメやイルカなど、気になるものを見かけたらそれらもさっとスケッチする。

（帰ったら何をチョイスしてネットに上げるかね。海だから水彩画がいいな）

　そうして甲板で過ごすうちに船は寝子島へ戻ってきた。月詠はスケッチを抱えて船を降りた。

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