- 0
- 0
- 種族
-
- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
LIQUID -Star Chronicle- 不死創製編
【躍る！ マジカルパフォーマーズ（２）】
熱かった夏は過ぎ去り、リキッド大陸の秋も深まる。
「ごめん、マユラちゃん！ 待たせちゃったか？」
「ううん、ぜんぜん。さっき来たとこだよー」
マユラ（プレイヤー：落合 まゆら）とアヤト（プレイヤー：京極 綾人）、ふたりにとって大切な時間は主に、ＶＲの中にあった。
「うお、すごいなー！ ワインツはいかめしい軍事帝国ってイメージだったけど、ハロウィン一色じゃないか」
「あっほら、あそこ見て！ 仮装した子どもたちがいるよ、かわいすぎ～！」
たしかに帝都ソーヴィニオンはオレンジやパープル、ブラックのハロウィンカラーがそこかしこに飾られて、道ゆく人々はジャックオーランタンにゴースト、ゾンビやキョンシー、ヴァンパイアといったコスチュームプレイに余念がない。世界観の緻密な考証やら考察勢からすれば、現代的なハロウィンイベントがリキッド大陸へ持ち込まれるのはいかがなものかと眉をひそめるのかもしれないが、コンテンツビジネスとして考えればこれほど自然な流れもないのである。リキッド大陸にはクリスマスだってあれば、年明けにはお正月だってやってくるのだ。
そうして季節ごとの風物詩を『LIQUID』の中で楽しむのは、ふたりにとっての定番となりつつあった。マユラとアヤトは恋人同士である。冒険のさなかに絆をはぐくみ、多数のプレイヤーたちに囲まれながらたがいに思いのたけを打ち明けたのは、そういえばここワインツの往来だった。
恋人であればＶＲから飛び出し、現実においても仲睦まじく過ごしているのだろうと思いきや、そちらはサッパリである。なにしろふたりとも忙しい。かたや売り出し中の新米声優、かたやブレイクしスターダムを駆け上がらんとしているロックバンドのリードギター。ともに休みが取れる日が重なったとしても物理的な距離が埋めがたい障害となり、結局『LIQUID』内で顔を合わせるのが手軽かつ低コストで現実的、というのが実情だ。
「うん？ どうした、マユラちゃん」
「あ、なんでもないよ。どこから見て回ろっか？」
「そうだなあ、やっぱ城かな？ 吸血鬼の居城みたいになってるじゃん」
「あはは、ほんとだよね」
アヤトはごく自然にマユラの手をとり、歩き出す。
忙しいのはいい。目指すはベテランの先達たちのような、業界に燦然とかがやく声優の星である。彼らとて初めからトップを走っていたわけではなく、数多の作品に出演し、一歩ずつ着実に歩んできた結果が今の地位であるのだから、マユラとて立ち止まってはいられない。今の段階では仕事の選り好みなどせず、とにかく多数のキャラクターに息を吹き込んでゆく過程で、経験を得て技巧を身に着けてゆくのが先決だろう。だから、多忙はむしろ大歓迎だ。
マユラがどうにも、ハロウィンの賑やかさ、お祭り騒ぎにいまひとつ乗り切れないのは、実のところ隣を歩むアヤトのまぶしいかがやきがためであったりする。
「アヤト、最近すごいよね。売れっ子でさ」
「ん？ まあ、そうだな。おかげさまでね、あちこち呼んでもらえててさ。ありがたいことに」
シーズン中は半永続的に続くバフが得られるというカボチャ料理をつまみながらに歩きつつ、マユラの思いが少しばかりもれだした。眉がへにょり、下がってしまうのを止められない。
「それにくらべて、あたしはさー。まだぜんぜん声優の仕事だけじゃ食べていけないし、バイトばっかりやっててさ。テレビを見たら、『Edwoods』のライブ映像が流れてて……あたし、なんだか置いていかれちゃうような気がして、わっ！？」
ぐいと強く手を引かれ、ふたり駆け出す。下がりがちな目線を上げるとそこには、彼のアバターが浮かべる、すこうしだけ心配そうな、そして憂いを吹き飛ばさんとしてかそれ以上にまばゆい笑顔があった。
「とりあえず、楽しもうぜ！」
「あ、アヤト……！？」
「忙しくしてたって、駄弁ってたって、マユラちゃんは近いうちに絶対絶対、ブレイクすんだから。オレは知ってるんだ。マユラちゃんがどんだけ努力家で頑張り屋かってこと！ こんな素敵な女の子、世間がほっとくわけないもんな！」
言葉はマユラの胸へと染み入り、頬を朱に染めた。アヤトは時にこうして、聞いているほうが赤面してしまうようなセリフを臆面もなく、心から言ってのける、率直で気持ちのいい青年なのだ。
「……うん。そうだね。ありがと、アヤト！」
「ああ。せっかくだし楽しもう、ほら、城が見えてきた！」
腕を羽ばたく翼めいて動かしながら、夜翔するこうもりのように、ふたりはハロウィン一色に飾り付けられた宮廷へと駆け込んでいった。
熱かった夏は過ぎ去り、リキッド大陸の秋も深まる。
「ごめん、マユラちゃん！ 待たせちゃったか？」
「ううん、ぜんぜん。さっき来たとこだよー」
マユラ（プレイヤー：落合 まゆら）とアヤト（プレイヤー：京極 綾人）、ふたりにとって大切な時間は主に、ＶＲの中にあった。
「うお、すごいなー！ ワインツはいかめしい軍事帝国ってイメージだったけど、ハロウィン一色じゃないか」
「あっほら、あそこ見て！ 仮装した子どもたちがいるよ、かわいすぎ～！」
たしかに帝都ソーヴィニオンはオレンジやパープル、ブラックのハロウィンカラーがそこかしこに飾られて、道ゆく人々はジャックオーランタンにゴースト、ゾンビやキョンシー、ヴァンパイアといったコスチュームプレイに余念がない。世界観の緻密な考証やら考察勢からすれば、現代的なハロウィンイベントがリキッド大陸へ持ち込まれるのはいかがなものかと眉をひそめるのかもしれないが、コンテンツビジネスとして考えればこれほど自然な流れもないのである。リキッド大陸にはクリスマスだってあれば、年明けにはお正月だってやってくるのだ。
そうして季節ごとの風物詩を『LIQUID』の中で楽しむのは、ふたりにとっての定番となりつつあった。マユラとアヤトは恋人同士である。冒険のさなかに絆をはぐくみ、多数のプレイヤーたちに囲まれながらたがいに思いのたけを打ち明けたのは、そういえばここワインツの往来だった。
恋人であればＶＲから飛び出し、現実においても仲睦まじく過ごしているのだろうと思いきや、そちらはサッパリである。なにしろふたりとも忙しい。かたや売り出し中の新米声優、かたやブレイクしスターダムを駆け上がらんとしているロックバンドのリードギター。ともに休みが取れる日が重なったとしても物理的な距離が埋めがたい障害となり、結局『LIQUID』内で顔を合わせるのが手軽かつ低コストで現実的、というのが実情だ。
「うん？ どうした、マユラちゃん」
「あ、なんでもないよ。どこから見て回ろっか？」
「そうだなあ、やっぱ城かな？ 吸血鬼の居城みたいになってるじゃん」
「あはは、ほんとだよね」
アヤトはごく自然にマユラの手をとり、歩き出す。
忙しいのはいい。目指すはベテランの先達たちのような、業界に燦然とかがやく声優の星である。彼らとて初めからトップを走っていたわけではなく、数多の作品に出演し、一歩ずつ着実に歩んできた結果が今の地位であるのだから、マユラとて立ち止まってはいられない。今の段階では仕事の選り好みなどせず、とにかく多数のキャラクターに息を吹き込んでゆく過程で、経験を得て技巧を身に着けてゆくのが先決だろう。だから、多忙はむしろ大歓迎だ。
マユラがどうにも、ハロウィンの賑やかさ、お祭り騒ぎにいまひとつ乗り切れないのは、実のところ隣を歩むアヤトのまぶしいかがやきがためであったりする。
「アヤト、最近すごいよね。売れっ子でさ」
「ん？ まあ、そうだな。おかげさまでね、あちこち呼んでもらえててさ。ありがたいことに」
シーズン中は半永続的に続くバフが得られるというカボチャ料理をつまみながらに歩きつつ、マユラの思いが少しばかりもれだした。眉がへにょり、下がってしまうのを止められない。
「それにくらべて、あたしはさー。まだぜんぜん声優の仕事だけじゃ食べていけないし、バイトばっかりやっててさ。テレビを見たら、『Edwoods』のライブ映像が流れてて……あたし、なんだか置いていかれちゃうような気がして、わっ！？」
ぐいと強く手を引かれ、ふたり駆け出す。下がりがちな目線を上げるとそこには、彼のアバターが浮かべる、すこうしだけ心配そうな、そして憂いを吹き飛ばさんとしてかそれ以上にまばゆい笑顔があった。
「とりあえず、楽しもうぜ！」
「あ、アヤト……！？」
「忙しくしてたって、駄弁ってたって、マユラちゃんは近いうちに絶対絶対、ブレイクすんだから。オレは知ってるんだ。マユラちゃんがどんだけ努力家で頑張り屋かってこと！ こんな素敵な女の子、世間がほっとくわけないもんな！」
言葉はマユラの胸へと染み入り、頬を朱に染めた。アヤトは時にこうして、聞いているほうが赤面してしまうようなセリフを臆面もなく、心から言ってのける、率直で気持ちのいい青年なのだ。
「……うん。そうだね。ありがと、アヤト！」
「ああ。せっかくだし楽しもう、ほら、城が見えてきた！」
腕を羽ばたく翼めいて動かしながら、夜翔するこうもりのように、ふたりはハロウィン一色に飾り付けられた宮廷へと駆け込んでいった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2025年10月22日
- 参加申し込みの期限
-
- 2025年10月29日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2025年10月29日 11時00分
