あれれ？　混沌の寝子高見学会！？｜リアクション

あれれ？　混沌の寝子高見学会！？

＞体育館・進学説明会にて

　進学説明会では、学校の紹介の他入試での採点に関してなどやや踏み込んだあたりについても説明が行われた。佐藤瀬莉はパンフレット片手に、偶にそれへメモをしながら聞いている。
　周囲にいるのは、聞こえてくる会話などから大体が中学３年生の先輩とその保護者。ちらほらと自分と同じ中学２年生の姿も見える気がする。その状況に緊張しながらも、彼女は説明の耳を傾ける。
　前方では、牛瀬巧と名乗った男性教諭がスクリーンに写された図を使って寝子高からの進学状況を説明していた。
　それらを聞きながら、瀬莉は僅かにため息を吐く。
（そうか、『２年生だからまだ早い』って事はないんだ……。今からできる事は、何かな？　う～ん……、苦手な部分を潰すことかなぁ）
　難関校だと、もっと早いうちから準備しないといけないとも聞いた。それならば、今から入試に向けて準備し始めてもいいだろう。そんな風に瀬莉は考えた。
　正直、寝子高に行くと決めたわけではなかった。もしかしたら木天蓼市内にある別の高校に行くかもしれない。それでも寝子高の見学を決めたのは『近場の学校』だからというのがあった。
（それにあの学校、色々と騒々しくて妙に楽しそうだものね。時折おかしなことがおこったりもするけど）
　それが瀬莉の動機。しかし、ここにきて少々寝子高への興味と高校受験への意欲がむくむくと心にわいてきた気がする。
　とそこで、彼女の耳にこんな話が聞こえてきた。
「……といったところが主な進学先ですが、中には海外に修行へ行った生徒さんもいます。確か……」
（海外に？！）
　その言葉に、瀬莉の表情が僅かに引き締まる。
　彼女は将来の夢に『スイスの時計学校に留学し、時計職人になる事』をあげている。
　ここに通う事で、一歩近づけるだろうか？　その夢に繋げられるだろうか？　瀬莉は瞳を輝かせ、その為に努力しようと心に決めた。

　進学説明会が終わると、瀬莉はどこに行こうかとパンフレットを開く。
「たしか、今回は校舎が見学出来て、部活動紹介も行われているんだよね……」
　どっちから見に行こうか、と考えていると「校舎見学から行ってみたらどうかな？」という声が。顔を上げると茶色の眼をした女性教諭――川添かおるである。
「けっこう部活紹介に人が流れているみたいだし、校舎の方が空いているかもしれない」
「ありがとうございますっ」
　瀬莉がお礼を言い、校舎へと向かっていく。その背中を見送り、かおるは小さく手を振った。

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