寝子高七不思議シリーズ：骨格標本さんが転んだ？｜リアクション

寝子高七不思議シリーズ：骨格標本さんが転んだ？

　カタカタッ

　音がする。
　室内にいた修と天野が、瞬時に手に持っていた鏡を見た。
　だが、はっきりと見えない。
　暗すぎた。

　ちくわくんの中にいる美野梨は、着ぐるみの目から覗いていたが、はっきり見えない。
　暗いうえに視野が狭かった。

　だが。

　カタカタッ。パタ、パタタタ……。
　また音がする。

　修と天野はその場に立ち上がった。
　間違いなく動いたのだろうか。
　よく目を凝らすと、標本の足元に置いていた本が倒れている。
　間違いなく標本は動いたのだ！

　確信を持った修と天野は標本に駆け寄る。
「今、君、動いたかい？」
　天野の質問に、骨格標本は応えない。
　今は動いていない。だが、明らかな証拠が足元にあった。
「毎晩何をやっているんだ？」
　修の質問にも応えがない。
　標本は動かぬまま。
　ちくわくんの中にいた美野梨が尋ねる。
「動いた証拠があるわ。白状したらどう？」
　しかし動かない。

　漂ってくるチーズの香りが強くなった。

　そのときだ。

　修、天野、美野梨の前で、骨格標本が堂々と動き始めた！
　生物室の外へ向かうようだ。
「すばるくん、そっちへ行くわ！」
　ちくわくんの中の美野梨が大きく呼びかける。
　がらっと生物室の扉が開き、すばるが入ってきた。
「なにかあったのか……って動いてる！？」
　突然のことにびっくりしているすばるの横を平然とすり抜け、骨格標本は廊下を歩きだした。

　トイレにいた飛鳥も駆け寄ってくる。
「本当に歩いてる！」
　慌てて周囲を見渡す。
　動かしてる誰かがいないか。人影はないか。
　だが、見つけられない。

　骨格標本は利平やレイの目の前も通り過ぎる。
「ビンゴ！　今日のボク、冴えてる！」
　嬉しそうにレイは骨格標本に駆け寄る。
「僕はレイ！　君のお話が聞きたいんだ！」
　レイがそう呼びかけても反応はなかった。
　ひたすら歩いていくだけだ。
「君をモデルにしたお話を書きたいけど、駄目かな？」
　無言で歩き続ける骨格標本。
「ひょうっ　ほんとに出やがった」
　標本だけに？　駄洒落遺伝子の為せる業なのか。
　利平は続けて話しかける。
「お前、何か話せるのか？
　ほわったいむいずいっとなう？
　かぷちーのいたりあーの？」
　標本は応えない。ただ歩くだけだ。
　いったいどこへ行こうというのだろうか。

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