夏のおとまり朗読会｜リアクション

夏のおとまり朗読会

◆ハヤブサの物語

　八神修は七夜あおいとともに寝子島にある自宅で連泊バカンスを楽しんでいた。ちょうどそのとき、寝子島図書館で『夏のおとまり朗読会』があることを知る。

「よければやってみないか？」
「いいね、やりたい！」

　折角なので紙芝居を作って持参することにした。どんな話にするか修とあおいはお互いに頭をひねる。読み聞かせる相手は子供たち。図書館で一夜を明かす。その雰囲気に合ったテーマを考えて作り上げた。

「楽しんでもらえるといいね」
「きっと大丈夫だ」

　星ヶ丘の自宅から旧市街にある寝子島図書館へ移動する。到着するとイベントのために集まった人たちが結構いた。図書館に慣れてない子もいるようで、そわそわしている。
　しかし朗読会が始まると、皆静かになった。修たちの前にスタッフの朗読が始まると、やはりというべきか読み方だけでなく聞かせ方もうまい。感心している間に修たちの番がやってきた。やや緊張しつつ子供たちの前に出る。

『はやぶさ君の冒険』

　２人で考えたタイトルを読み上げる。文章を読むあおいとセリフや効果音を言う修のペア朗読だ。

「お空の遠い遠いところにイトカワという小さな星がありました。どんな星なのか知りたくて、でも飛べない皆はただ寂しく空を眺めていました」

　そう言いながらあおいが上を見上げると、子供たちも同じように上を見る。

「そんなとき、はやぶさ君が言いました」
「僕が、欠片をもらってくるよ」

　ページをめくると現れたのは人工衛星ハヤブサをモチーフにしたキャラクター。

「小さい体です。翼も小さいです。あんな遠くに一人で行くなんて……でも、彼は勇気をもって決めたのです」
「僕に任せて！」

　物語は進み、あおいの語りと修の表現で子供たちの注目を集める。数々の困難を乗り越え、最後に燃え尽きる彼。その頑張りを伝えたいという２人の思いはきっと届くだろう。
　紙芝居が終わったら、ハヤブサに関する本を棚から取り出す。ハヤブサから届いた地球の画像やカプセル、そして欠片の写真を見せる。

「今色々な大人たちがこういうのを調べているんだ」

　人工衛星のハヤブサに興味津々な子。物語に感動して泣きそうな子。いろいろな子たちを前に、２人は喜びをかみしめていた。
　朗読会が終わり、スタッフが用意した布団へ皆で向かう。窓際から見える星空は、今日の物語を表現しているように思えた。横になった２人は小さな声で語らう。

「みんな聞いてくれてよかった」
「あおいの語りが良かったからさ」
「修くんのセリフも雰囲気が出ててよかったよ」
「ありがとう」

　そっとあおいの手が触れる。お互いに顔を見合わせ、修はその手を優しく握った。

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