夏のおとまり朗読会｜リアクション

夏のおとまり朗読会

◆落ち着く声色

　綾辻綾花と早川珪先生は２人で寝子島図書館へ。
　ここはデートでもよく行くが、今回は『夏のおとまり朗読会』というイベントに参加する。お泊まりということで珪先生にお弁当を用意した。一緒に食べるつもりなので、ちょっと多めに作ってきている。

（多めな自覚はありましたが、この量なら子供たちと一緒に食べたいですね）

　イベントは夕方からなので、涼しくなってきた頃に人が増えてきた。所定の場所に集まって、子供たちが読んでほしいと持ってきた本を優先的に読む。ちょっと声色を変えつつ、優しい声ではっきりと聞こえるように意識する。
　猫の１日をほんわか描いた『にゃんこのひび』は猫の視点で過ごす様子を丁寧に伝える。次に頼まれたのは『猫丸大冒険』で、侍のような恰好をした猫が主人公だ。先ほど読んだ作品とはだいぶテイストが違うので、緊張感を出しつつ声は張り上げないように気を付けた。
　子供たちの表情が場面ごとに変わるので、綾花も楽しくなってくる。

（喜んでもらえてるのなら嬉しいです）

　色々気を遣って朗読すると意外に疲れるようで、ぐったりしてしまった。休憩も兼ねて珪先生の朗読に耳を傾ける。落ち着いた声色に思わず聞き入ってしまう。

（やっぱり珪さんの声、好きですね）

　子供たちに混ざって珪先生の紡ぐ物語に耳を傾ける。おやつ休憩のときには図書館側からゼリーと菓子パンが配られた。それでおなかいっぱいな子もいるが、足りないという子たちと弁当を分けあう。小さく切り分けたサンドイッチは特に人気だった。
　そして夜の図書館を探検したあとは、星空の見える窓際に敷いた布団へ向かう。寝相の悪い子供たちの布団を直したり、眠れない子のそばに行って声を掛けて優しく撫でる。落ち着いてきた頃に、綾花も布団に横になる。彼女は子供のころに戻ったみたいでわくわくしていた。

「星を見ながら寝るのって楽しいですね」
「そうだね」

　珪先生も隣の布団で横になる。布団のなかでこっそりと手をつなぐ。その温もりに安心を覚えると、だんだん眠気がやってくる。

（みんなにとって楽しい朗読会になったでしょうか……）

　そんなことを思いながら夢の世界へ溶けていった。

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