業火のショッピングモール｜リアクション

業火のショッピングモール

「拓人くん　６さいおめでとう、か」
　清恋は、４階のレストラン『ポリーズ・キッチン』に辿り着き、予約席の札があるテーブルから写真を手にとる。
　新幹線のＴシャツを着た父と子が、誕生日ケーキと一緒に写ったものだ。

（さっきの店内放送で言っていた、さやまたくとくん、というのはこの子のことかな。父親とは会えたんだろうか？）

　火事の中でレストランに来たのは、もちろん食事をするためではない。

（バートラム＆ジョンソン……こんな派手な火事なら、事件になっていない筈は無いんだけど）

　清恋の刑事としての勘が脱出ではなく、捜査へと向かわせていた。

「さて、次は１階のインフォメーションセンターに行くべきか……それとも……」

　レストランを出て階段に向かった清恋は、行く先の炎が不自然に蠢いているのに気づいた。

　――その炎は人の形をしている。
　清恋が近づくと、肩から上が炎に包まれた――恐らくは男性らしき人物が、こちらを向いた。

　――キャンプ用の斧を振りかざして。

◆

「息子を！　息子を御存知ありませんか？　６歳になったばかりで、私と同じ新幹線のＴシャツを来ている、拓人という子なんです！　ポリーズ・キッチンというレストランで食事をした後、火事が起こって、はぐれてしまったんです！」
　まゆらが助け起こした男性は、狭山浩一と名乗り、立ち上がろうとしてよろめく。
「たくとくん……？　もしかして、さっきの店内放送で呼ばれていたさやまたくとくんのお父様ですか？」
　まゆらは、火事が起こる直前に流れた迷子のお知らせを思い出した。
「そうです！　拓人はどこに？」
「えぇ、１階のインフォメーションセンターにいらっしゃるそうです」
「あぁ、良かった！　ありがとうございます、落合さん！」
　怪我をした浩一を支え、１階まで向かうことにしたまゆらだったが。
　一つだけ、不思議に思うことがあった。

（ポリーズ・キッチンなんてレストラン、あったかな？）

◆

　炎と煙を避けながら、調査したタルトに分かったのは、ここがミャオンレイクビレッジではなく、バートラム＆ジョンソンという百貨店だということだった。

（海外の老舗が、日本に初進出って、お手洗い前の壁にずらっとプレートが並んでるんだもんね……）

　さすがに火が怖くなったタルトは、水筒の水をかぶって猫に変身。
　寝子島島外でもろっこんが有効なことに驚きつつ、炎のない隙間を探して移動しようとすると、どこからか子供の泣き声が聞こえてきた。

「お父さーん、お父さぁん、どこー！」

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