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早めに店に入るとバックヤードには、記憶にない香水の香りがただっていた。カットフルーツにとろみのあるシロップをたっぷりかけたような、過剰なまでに甘い匂い。
由来は、すぐに知れた。
メイク台に陣取っていた、見覚えのない女性がくるりとこちらを振り向く。彼女は素早く立ち上がり、両足をぴたりとそろえて胸の前で手を添えた。
「おっはようございますぅ~♡」
すごい声だった。
夕方だろうが夜だろうが、「おはようございます」がこの業界の定型挨拶なのは、さゆるももう慣れている。だが問題はその声質だ。甲高く、鼻にかかったトーン。頭のてっぺんから絞り出しているような、作り込まれたアニメ声。じゅんが『まみ子』として演じるキャラクターを彷彿とさせるが、さらに“盛られて”いた。媚の塗り重ねかたが露骨というか、計算されすぎているというか。
音程を一ミリも下げることなく、涼しい顔で彼女はつづける。
「はじめまして、わたくし、新入りの
みちゃ子
と申しますわぁ。さゆみ様ですわよね? 以後、お見知りおきを♡」
ロングスカートの両端をつまみ、うやうやしく一礼する。見事なまでに型どおりの動作だった。台本でもあるのかと思うほど、完璧すぎる不自然さがあった。しかもその風貌が拍子抜けするほど幼い。せいぜい中学生、ことによっては入学したての一年生にも見えるのだ。
彼女──後に本名
宮小路 美沙(みやこうじ・みさ)
と知ることになる人物は、血管が透けそうなほど白い肌に、熟れた葡萄を思わせる青紫のロングヘアをふわりと揺らしていた。肩にフリルをあしらったホワイトのシフォンブラウス、同色のレースのティアードスカート、細いリボンベルトを巻き、ピンク色の小ぶりなハンドバッグを脇に置いている。足元は、艶やかなエナメルのヒールだ。ダイヤモンドを砕いて埋め込んだような煌めきのある瞳で、こちらをまっすぐに見つめてくる。
さゆるは詳しくないが、アニメかゲームにこんなキャラクターがいた気がする。ネコミケから寄り道してきたコスプレイヤーにしか見えないが、れっきとしたキャストらしい。
じゅんが見たら、どう思うかな。
とっさに思った。
じゅんの『まみ子』は同じアニメ声でも、その裏に毒や哀愁の成分が絶妙に含まれていた。だがみちゃ子は、その苦み成分の一切を蒸留で除去して、陽気さとエレガンスを加え煮詰めたような印象だ。もはや擬似スイーツといっていい。白いがゆえに、むしろ得体が知れない。
内心ざわつくものを覚えつつも、さゆるもほほえみを浮かべて頭を下げる。
「さゆみ、です。よろしくお願いします」
人手不足が常態化している『プロムナード』では、スポットで入るアルバイトキャバ嬢も少なくない。だが、みちゃ子には、そうした一時的な助っ人とはちがう、プロ意識のようなものが感じられた。衣装、声、仕草、すべてが完成されたひとつの演目を観ているかのようだ。
ロッカールームの扉が開いた。さゆる、みちゃ子を含め数人のキャストが反射的にそちらを見る。
姫木じゅんの出勤だ。ツインテールにゴスロリ仕様のワンピース、ミニ丈から伸びる細い脚に赤いヒールだった。すでに衣装とメイクは万全で、同伴帰りらしくバッグには手土産らしき紙袋が提げられている。
いつも通りの、はずだった。
だがじゅんの表情はちがった。唇は真一文字に結ばれ、目の奥に殺気すらある。
周囲の空気が一瞬にして三度は下がるような顔だった。
じゅんの視線の先にいるのは、みちゃ子だ。
「……ッ、マジでいやがる」
つぶやきというには低すぎる声が漏れた。
みちゃ子はというと、相変わらず脚をそろえて立っている。しかもじゅんを目にするや、抱きつかんばかりの勢いで駆け寄ったのだ。
「まみ子お姉様~♡ おひさしぶりですわっ」
「久しぶりじゃないだろ。昼間会ったろ」
じゅんはさっと手を突き出して『近寄るな』と無言で示した。
「あんたが面接に来るって知ってたら、アーナンド店長や若先生に釘を刺しておいたのに」
じゅんのこめかみに血管がぴきっと浮いた。ところがこれを聞いてもみちゃ子は、頬にキスされたように上気するばかりだ。
「うふふ、新天地デビューってやつですわ。今日からこちらにお世話になりますの。ね? お姉様とまた、同じお店に♪」
「ふっざけんな……!」
さゆるは息を呑んでいた。じゅんの全身から怒気があふれ出している。普段の彼女なら、どんなに嫌いな相手であっても最低限の営業スマイルを浮かべるはずだ。だが、いまのじゅんにはそれすらない。
「ええと、知り合いだったのかな? さっき初めてご挨拶したんだけど……」
さゆるが言いかけたとき、みちゃ子がくるりとこちらを振り向いて、あいかわらず完璧な作り笑顔で小さく会釈した。
「ええっ、なにを隠そうこのわたくし、まみ子お姉様の妹なのですわ!」
「
その『設定』、ここでは禁止だ!!
」
とうとうじゅんが叫んだ。その声に、メイクをしていたキャストたちが一斉に手を止めた。パウダーブラシも、ビューラーも、ヘアアイロンまでもが宙で静止する。
あんな
なんて、ぽかんと口を開けたままだ。
「おやおや。照れ隠しもほどほどにお願いしますわ、お姉様」
「あんたいい加減にしないと……っ」
肩が震えている。あと一言でも挑発されれば、ロッカーが一基吹っ飛びそうな勢いだった。
戸惑うばかりのさゆるの腕を、そっと
沙央莉
(こと
三木 桜咲香
)が引いた。対峙するふたりから距離をとらせると、派手めのカラコンを入れた目を細めて小声で告げる。
「……あの子とまみ子、前に同じ店で働いてたから。相当バチバチだったって、業界じゃちょっとした噂だった」
「そうなんですか?」
さゆるが聞き返すと、沙央莉は「聞いた話だけどね」と苦笑を浮かべた。
「池袋の店じゃ、『黒ロリ☆白ロリ』ってセットで売り出されてたらしいよ。まみ子が黒、あの子が白。どっちもビジュアル強いからさ、相当人気はあったみたい。けど──」
そこで一度、言葉を切る。ちらと、怒りに肩を震わせるじゅんを見やってから、声をひそめた。
「白いほう、性格が……ちょっとってレベルじゃなかった。他の嬢の指名客に色目使って奪うのなんて日常茶飯事、お客さんの前では他の嬢を持ち上げて『憧れですの~』とか言っといて、裏じゃ『私のが若く見えるしウケいいし』って堂々とマウント取ってたって」
クラブ『プロムナード』のキャストたちは年齢も境遇も越えて仲がよく、休日すら一緒に過ごすことがあるほどだが、そんなのは例外中の例外だとさゆるも聞いていた。たいていのキャバクラは、キャスト間の人間関係がドロドロしているものなのだと。
「しかも貢がせ方が尋常じゃない。誕生日のたびにブランドバッグ、ネックレス、時計……ホストでもドン引きするレベルの爆買いさせてて、太客何人かを自己破産寸前に追いやったって話もある」
なるほど、とさゆるは思った。みちゃ子に感じた名状しがたい印象の正体がわかった。
「一度ね、そのお客の奥さんが店に怒鳴り込んできて警察沙汰になったって。その修羅場も派手だったらしい」
沙央莉は溜息をついた。口調は抑えめでも、告げているのは冷ややかなリアルだ。
「んでトドメは、あの子が“お姉様”ことまみ子を、イベントのときにお立ち台から突き落としたって」
「……物理的に?」
「そう、物理的に。ステージでケーキカットした後に、にこにこしながら肘入れて。それでまみ子、落ちて捻挫したみたい。それがきっかけでガチ喧嘩になって、結局あの店、どっちも辞める形になったって聞いた」
「どっちも……って、じゅんもですか?」
「自分から辞めたの。『こんな女と一緒にやってられない』って。その後はフリーで別の店を点々として、やっと『プロムナード』で落ち着ついたって話なのに」
沙央莉は軽く首を振りながら、低くつぶやいた。
「よりによって、“白”のほうが追ってくるなんてね」
その言葉に、さゆるは思わずみちゃ子のほうを見やった。
あいかわらず、天使の仮面を一ミリも歪めることなく、笑顔でじゅんのそばをうろうろしている。だがその瞳の奥、ダイヤモンドの光の奥に、もっと硬くて冷たい何かが潜んでいる気がしてならなかった。
嵐の、予感。
パンパンに張った風船に、さらに息を吹きこもうとする大道芸人の姿をさゆるは連想した。
開店時間前に取っ組み合いの喧嘩になったら、どうしたらいい──?
だが最悪の事態はまぬがれた。
「おはよう。みんな元気? みちゃ子さん、今日からよろしくね」
まもなく
夕顔
が出勤してきたのだ。
まるで、月下に咲いた一輪の白百合のようだった。
細やかに整えられた髪も、ひとつも乱れのないドレスのすそも、すべてが気品に満ちている。それでいて、誰に対してもやわらかく、慈しむようなほほえみをたたえていた。女優のような、という形容詞は、夕顔にこそふさわしい。
その場にいた誰もが、思わず背筋を伸ばしてしまう。威圧ではなく、あまりにも自然な品格ゆえの反応だった。
みちゃ子すらも口をつつしんでいた。エレガントさを崩さぬまま挑発をつづけていた彼女が、一歩引いたのだ。まみ子にからむのをやめ、夕顔の前に出て従容としている。舞台の主役が登場した瞬間に、脇役が照明の陰に退くかのように。
さらにつづいて、
アーナンド・ハイイド
が顔を出し、
「はーい、みなさーん、開店時間ですよー」
と、いつも変わらぬ太陽のような笑顔を振りまいたものだから、ようやくバックヤードに平穏が戻ったのである。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
NPC交流
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2025年07月20日
参加申し込みの期限
2025年07月27日 11時00分
アクション投稿の期限
2025年07月27日 11時00分
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