蛍屋敷からの脱出｜リアクション

蛍屋敷からの脱出

【プロローグ】

　７月のある日の夕暮れ時。
　仙藤紫と仙藤蒼の姉妹は、近所のコンビニへと出かけた。
　その途中、草むらに群れた蛍に、二人は足を止める。
「綺麗……」
「ええ」
　思わず呟く蒼に、紫もうなずく。
　二人はしばらくそこで、蛍の群れを眺めていた。
　すると。
「え？」
　蒼は「助けて……」と囁く声を聞いた気がして、思わずあたりを見回した。だが、自分たち以外、誰もいない。
「お姉ちゃん、何か言った？」
　紫に尋ねてみるが、彼女はかぶりをふる。そこで、「今何か聞こえなかった？」とも問うが、やはり紫はかぶりをふるばかりだ。
　だが、声はたしかに聞こえた。蒼はもう一度、周囲を見回した。
　その彼女の視線の先で、一匹の蛍が誘うようにチカリ、チカリと光る。
「ついて来いっていうの？」
　呟く蒼の前で、蛍はすいっと動き出した。蒼は、そのあとについて歩き出す。

　おかしなことを訊いて来たと思ったら、突然歩き出した妹に、紫は驚いた。
「蒼？」
　声をかけるが、蒼は聞こえないのか、どんどん先へと歩いて行く。
　紫はしかたないと一つ吐息をついて、そんな妹のあとを追った。

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