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心層深淵劇場 想念花
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寒い。凍えそうだ。
稲積 柚春
は夏の制服姿で素足をさらし半袖であるからこの極寒に震え、自らの身を抱いた。
塔。だろうか、螺旋階段が内側に巡っている。階段は上方にのみ続き階下には何もない。いや凍結しきらぬ濁った水が塔の底に溜まり、何かが旋回しながら泳ぐのが見えた。魚ではないだろう。それには手足があった。顔は見えないが長く伸びる金色の髪を水面に揺らめかせていた。
「……ワット」
理由は分からない。にも関わらず確信があった。塔は
ウォルター・B
のものだ。
水面の影はぐるぐると水底を巡る。近づくのは憚られた。柚春は上を向き、螺旋階段を登ることにした。
「寒っ……」
腕をこすり白い息を吐く。手はかじかみ足は震え階段を登ってゆくのにも難儀する。それでも上らねばならぬと柚春は奮起した。理由は分からないがその確信だけが柚春にはあった。
「あ」
螺旋階段には一定の間隔で踊り場があり、その一つにコートがふわりと落ちていた。ウォルターが以前に着ていたものだろうか。少なくとも冬場の彼の上着はこのような感じであった気がする。ありがたく拝借し羽織ると襟元からは嗅ぎ慣れた匂いがした。
柚春が階段を登ると水底に変化があった。水位が上がってゆくのだ。一段また一段と登るとその分水面はせり上がる。そこを泳ぐ何者かもついてくる。
「…………」
足を止めて一瞥し、息を吐いて再び登る。水位は上がり耳に着く水音が止まることはない。そういう場所なのだろう。納得しまた一歩、凍り付きそうな足を持ち上げる。
氷の塔はその直上に不可思議な光を湛えていた。遠く、白くまぶしく明るくて、時に虹色をはらむ。光の下へ辿り着くにはまだ随分と登らねばなるまいが、光量は十分だ。
光は静かに揺らめき、時に激しく明滅した。燃えるような光を発する時には塔の内壁へと波状に輝きが伝い、プロジェクタースクリーンの如き働きを見せた。
「ワット。これは……ワットの思い出なの?」
柚春の手が壁を伝うと像は波紋のように揺らぐ。
ベッドに身を横たえた少年は泣き疲れて眠っていた。白磁のような空間は病院で、傷だらけの彼に巻かれた包帯が柚春へ時の流れを知らせた。事件が失わせたものは友と彼の心の一部だ。かつて柚春も垣間見た光景は確かに、彼が胸へ抱く消えない傷痕なのだろう。
「まだ、苦しんでいるの? 忘れられない?」
柚春は目を細めて小さくつぶやく。「忘れなくても、いいよ」と。ちゃぷと水底が弾んだ。
光は回転する。柚春が登るたび、光がぐるりと巡るたび内壁には異なる像が焦点を結んだ。雨濡れた彼は少年の殻を破り成年しているが背中には幼気を残す。墓石を前に沈み込む彼へかける言葉はいくつも浮かぶが、柚春はそれを飲み込んだ。過去を変えることはできず何かを伝えることも叶わない。ただ、知りたいだけだ。彼の心が変化したのかどうか。そこに柚春の想いや差し出した手が一助となったのかどうか。
水音に振り返るとそこに潜む者が顔を覗かせて柚春を見上げていた。といってぞろりと伸びた金色に隠れて目元は見えないが、幼い子どものようだった。柚春は笑いかけ、ふたたび塔を上階へと登る。
血色の花が開く光景を彼と共に見た。思い出のレイヤーが多重に重なり合い過去と過去が響き合う。黒髪の少年の面影はウォルターの胸に深く染み入り重く、広く影響を及ぼし彼の内の決して少なくない比重を占めていることは確かだ。否定はしない。できようはずもない……柚春とてそうだ。
「僕も一緒に背負うよ」
後ろを振り向き、「ね?」と同意を求める。水面が跳ねた。
「ぽっかりと穴が開いたような感覚。喪失感も、世の中への憤りも……自分を責めることも。全部、ワットの一部だった。今はどう? 少しは軽くなったのかな。僕は、一緒に背負えているのかな」
柚春が一歩歩めばその分、水面がせり上がる。一歩、また一歩と登る。直上の光は強まり気が付けば、内壁や階段に張りつく氷は溶けかけぽたりぽたりと水滴が足元を伝う。底の水は増してゆき、いつしか柚春の登る足取りを追い越し足首を浸し、あっという間にあふれ出す。
水中へ呑まれた柚春の身体は浮かび、足の付くこともなく手足をかくが、恐れはない。背丈の三倍も金色の髪を伸ばした少年はまったくの裸身で、自在に泳ぎ柚春の眼前までやってくると青い瞳をちらつかせ、笑った。塔に満ちる水は彼の瞳と同じ色をして、太陽のような笑顔とのコントラストに柚春の胸も満ちた。
少年に支えられるまま足をかき泳ぐ。塔の直上へ。光の下へ。
光は回転するライトで、塔は灯台だった。光はどこまでも届き鮮やかなブルーの海を照らし尽くす。
満ちていた水は排水され、灯台守の少年は裸身に大粒の水滴を滴らせながら海を眺め、穏やかに吹く風へ身を任せている。髪をかき上げる柚春の頬もいささか火照る程度に暖かく、氷はすっかり溶け切っていた。
「ふふっ」
柚春は少年へ近づくと無垢な顔を浮かべた彼の長大な髪をかき分け、額へキスをした。はにかむ青い瞳に憂いの色は無い。それが答えだ。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
網 透介
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2025年07月04日
参加申し込みの期限
2025年07月11日 11時00分
アクション投稿の期限
2025年07月11日 11時00分
参加キャラクター一覧
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