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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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この手で、君と。This is where we begin
去年を辿る足取りの中で、ウォルターは『今日』ここへ来た理由を胸に考えていた。
書類上、柚春が高校生なことなんて来る前からわかっていたし、自分だってそこへ在籍する教師なことも変わらない。こだわるなら、最初から生半可な期待を持たせず、明日の朝から来れば良かったはずだ。
（それでも今日、ここへ来たのは……）
きっと彼女にとっては苦い思い出もあり、強い願いもあり……大事な約束もした、バルミュラル城。
気軽に来られる距離でもないのに、わざわざ願いの叶えられない日に来てしまった。
「次はどこに行く？」
展示室から出て、ぼんやりと行き先を考えるように柚春が廊下の窓から庭園を見下ろす。
あちらこちらで笑い合う恋人たちの姿が否応なく目に入り、その寄り添う姿へ彼女が羨望の眼差しを向けているのがわかっても、ウォルターは思案を続けていた。
守らなければならない節度と、大切にしているケジメ。
今まで揺るぎなかった決意を、ほんの少し狂わせる逸れた鼓動。
……心の奥でひと匙だけ零れた、何か。
それが、理屈では動かなかったはずの足を、自然と前へ運んでいた。
「こっちだよ」
どこへ行っても恋にまつわる逸話が尽きないここで、意思を持って彼女の手を引くことがどういう意味か、わからないわけじゃない。
今までのように、柚春の希望に合わせているだけなんて誤魔化せない。『先生』として、取り繕うことも……きっと、できないけれど。
「ワット……？」
それでも今は、この手を離したくなかった。
庭園で語らう色とりどりの花には目もくれず、ウォルターは小道の奥へと歩み進めた。
噴水や水路の水音、睦まじい鳥の声。どれもが心地よく響くのに、立ち止まって聞き入ることも無い。
「……待ってるって言ったのにね」
そんなウォルターが足を止めたのは、花々に囲まれた石橋の前。
小さな池の浮島へと繋がる橋は、『手を繋いで渡ると未来に迷わず進める』との逸話があり、訪れた２人を祝福するような仕掛けも施されているという。
「ここって……」
少し驚いた顔で橋の様子を見る柚春は、「本当に？」と目線で訴えた。
橋の手前には『The Pathway to Vow』と看板が立てられ、浮島から流れてくる軽やかな音楽と、きらきら光るシャボン玉が、どこか幻想的な雰囲気を醸し出している。
多くは語らず、ウォルターは柚春と繋いだ手をしっかり握り直す。同じように強く握り返してくれた小さな手が、とても心強い。橋へ踏み出す勇気が、胸の奥から溢れるようだ。
「あんなに余裕ぶってたのにね」
橋を渡りながら漏れた、自嘲めいた呟き。隣からの視線を感じ、ウォルターは言葉を探すように歩き続けた。
澄んだ青い瞳が、今は迷いと深い愛情に揺れている。けれど浮島に着くと、その瞳は真っ直ぐと柚春の瞳を捉えていた。
「Walk with me. ……Forever, if you’d like」
まるで誓いのような言葉は、柚春の心臓を大きく跳ねさせた。
瞬時に理解できなくとも、彼の本音が語られているだろうことが仕草の端々から伝わってくる。
だから柚春は思わずといったように頷き、ゆるゆると微笑んでウォルターの胸に飛び込んだ。
（こんな時でも僕は、『君が望むなら』なんて言ってしまうのに）
彼女の柔らかな髪を優しく撫でながら、ウォルターは照れくさそうに微笑む。
すると、どこからともなくシャボン玉がふわりと舞い上がり、軽やかな音楽が流れ始めた。きらきらと光を反射しながら宙を漂うシャボン玉が、２人の周りを幻想的に彩るのを暫し見入り、柚春はぎゅっと彼の腕を組む。
――In vow, let silence speak your truth.
誓いの碑に書かれた文字が読めていたかはわからないけど、柚春は黙ったまま小さな１歩を踏み出した。
まるで当然とでも言うように、柚春はこの先の橋も渡れることを信じ、望んでいる。
確かにあった、線を越えることへの怖さ。でも、そこで怯えていれば失ってしまう恐ろしさ。
（だから今日、ここに来たんだ）
２つめの橋を渡りきると、睦まじい猫の鳴き声が聞こえた。
本当に居るのかと周囲を見れば、隠れるように『The Oath Archbridge』という看板が立っていて、柚春は不思議そうに振り返る。
「渡った橋って、別の名前だったよね？」
「それは最初の橋。こっちは……明日のお楽しみ、ってところかな」
クスクス笑うウォルターに柚春は深く問い詰めることなく、それじゃあ見つけた記念写真だけでもと寄り添って、スマートフォンを構えた。
写ったのは恋人未満、だけど教師と生徒以上。幸せそうに写る２人には、もう躊躇いや迷いは消えていた。
書類上、柚春が高校生なことなんて来る前からわかっていたし、自分だってそこへ在籍する教師なことも変わらない。こだわるなら、最初から生半可な期待を持たせず、明日の朝から来れば良かったはずだ。
（それでも今日、ここへ来たのは……）
きっと彼女にとっては苦い思い出もあり、強い願いもあり……大事な約束もした、バルミュラル城。
気軽に来られる距離でもないのに、わざわざ願いの叶えられない日に来てしまった。
「次はどこに行く？」
展示室から出て、ぼんやりと行き先を考えるように柚春が廊下の窓から庭園を見下ろす。
あちらこちらで笑い合う恋人たちの姿が否応なく目に入り、その寄り添う姿へ彼女が羨望の眼差しを向けているのがわかっても、ウォルターは思案を続けていた。
守らなければならない節度と、大切にしているケジメ。
今まで揺るぎなかった決意を、ほんの少し狂わせる逸れた鼓動。
……心の奥でひと匙だけ零れた、何か。
それが、理屈では動かなかったはずの足を、自然と前へ運んでいた。
「こっちだよ」
どこへ行っても恋にまつわる逸話が尽きないここで、意思を持って彼女の手を引くことがどういう意味か、わからないわけじゃない。
今までのように、柚春の希望に合わせているだけなんて誤魔化せない。『先生』として、取り繕うことも……きっと、できないけれど。
「ワット……？」
それでも今は、この手を離したくなかった。
庭園で語らう色とりどりの花には目もくれず、ウォルターは小道の奥へと歩み進めた。
噴水や水路の水音、睦まじい鳥の声。どれもが心地よく響くのに、立ち止まって聞き入ることも無い。
「……待ってるって言ったのにね」
そんなウォルターが足を止めたのは、花々に囲まれた石橋の前。
小さな池の浮島へと繋がる橋は、『手を繋いで渡ると未来に迷わず進める』との逸話があり、訪れた２人を祝福するような仕掛けも施されているという。
「ここって……」
少し驚いた顔で橋の様子を見る柚春は、「本当に？」と目線で訴えた。
橋の手前には『The Pathway to Vow』と看板が立てられ、浮島から流れてくる軽やかな音楽と、きらきら光るシャボン玉が、どこか幻想的な雰囲気を醸し出している。
多くは語らず、ウォルターは柚春と繋いだ手をしっかり握り直す。同じように強く握り返してくれた小さな手が、とても心強い。橋へ踏み出す勇気が、胸の奥から溢れるようだ。
「あんなに余裕ぶってたのにね」
橋を渡りながら漏れた、自嘲めいた呟き。隣からの視線を感じ、ウォルターは言葉を探すように歩き続けた。
澄んだ青い瞳が、今は迷いと深い愛情に揺れている。けれど浮島に着くと、その瞳は真っ直ぐと柚春の瞳を捉えていた。
「Walk with me. ……Forever, if you’d like」
まるで誓いのような言葉は、柚春の心臓を大きく跳ねさせた。
瞬時に理解できなくとも、彼の本音が語られているだろうことが仕草の端々から伝わってくる。
だから柚春は思わずといったように頷き、ゆるゆると微笑んでウォルターの胸に飛び込んだ。
（こんな時でも僕は、『君が望むなら』なんて言ってしまうのに）
彼女の柔らかな髪を優しく撫でながら、ウォルターは照れくさそうに微笑む。
すると、どこからともなくシャボン玉がふわりと舞い上がり、軽やかな音楽が流れ始めた。きらきらと光を反射しながら宙を漂うシャボン玉が、２人の周りを幻想的に彩るのを暫し見入り、柚春はぎゅっと彼の腕を組む。
――In vow, let silence speak your truth.
誓いの碑に書かれた文字が読めていたかはわからないけど、柚春は黙ったまま小さな１歩を踏み出した。
まるで当然とでも言うように、柚春はこの先の橋も渡れることを信じ、望んでいる。
確かにあった、線を越えることへの怖さ。でも、そこで怯えていれば失ってしまう恐ろしさ。
（だから今日、ここに来たんだ）
２つめの橋を渡りきると、睦まじい猫の鳴き声が聞こえた。
本当に居るのかと周囲を見れば、隠れるように『The Oath Archbridge』という看板が立っていて、柚春は不思議そうに振り返る。
「渡った橋って、別の名前だったよね？」
「それは最初の橋。こっちは……明日のお楽しみ、ってところかな」
クスクス笑うウォルターに柚春は深く問い詰めることなく、それじゃあ見つけた記念写真だけでもと寄り添って、スマートフォンを構えた。
写ったのは恋人未満、だけど教師と生徒以上。幸せそうに写る２人には、もう躊躇いや迷いは消えていた。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2025年07月11日
- 参加申し込みの期限
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- 2025年07月18日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2025年07月18日 11時00分
