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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
芽吹く約束。預けた想いの向かう先
今日も丘の上で、何度も祝福の音色を鳴らしていた小さな鐘。
綺麗に響き渡れば良いことがあるとされ、未来を願う恋人たちはもちろん、家族連れや友達同士、おひとり様だって制限はない。
猫恋の鐘に繋がる列へ並びながら、綾花はふと空に目をやった。
朝と変わらず快晴の空は、去年の秋とはまるで違う。もっと高くて澄んでいたあのときは、２人の関係だって違っていた。
――素敵な本と巡り会えるといいよね。
誤魔化すように笑った珪は、この鐘の謂れを知っていた。だから、あえて『一緒に鳴らしてもいい理由』を考えてくれたのだと……そう、思うことにしている。
そして先月の春。恋人として丘に来ることが叶ったその日は、空が霞がかっていた。
小雨に見舞われて、宣誓書もすぐには出せないと言われたけれど、彼の言葉を信じて今日まで待った。
そして、今。
霞が晴れ、鮮やかな青に染まりつつある空の下で、２人は鐘を鳴らす。
憧れで終わらせず、恋人宣誓書には猫神と天女の祝福を受けることができたし、きちんと季節に置いてかれずに、２人の関係も巡っているのだと実感できた。
手を握ってくれる珪の温もりが力強い。たくさんの言葉をくれた彼は、どんな気持ちで今日を……あの日の続きを、歩もうとしているのだろう。
「……鳴らしますね」
綾花がそっと綱に手を伸ばし、それを包み込むように珪が手を添える。
小さく深呼吸したのを合図にして、２人は少しだけ強く引いた。
――カラン、コロロロン。
澄んだ音が、空と海の青を貫くように響いていく。
まるで、今日の空気そのものが揺れるような……そんな、澄んだ音色だった。
余韻に浸るように珪を見上げる。春の陽射しが彼の髪に差し込み、柔らかい影を作っているのを、少しだけ期待するように見つめてしまって。
「……行こうか」
次の人も待っていると歩き出す珪は、何も間違っていない。けれど、綾花の胸で小さな波紋が広がった。
祝福の音は確かに鳴った。今まで鳴らした音よりも、輝いているような音だった。
だから、もう少し。ほんの、あと少し。
「あ、あの……これから、どうしましょうか。新しい縁結びグッズ、あったり……」
高台から降り、少し開けたところに出ても珪の足は止まらない。どこへ行くのかと、まさかデートは終わりなのかと、綾花は緊張を鎮めるために話題を振り続けた。
「そうだ、パンフレット！ 私の部屋へ見に来ませんか？ 予約も早いほうがいいと思いますし」
戸惑うような声音になってもなお、珪は何も答えずに足を進めていく。
そうして灯台近くまでやってくると――彼は、綾花の肩に額を乗せて大きな息を吐いた。
「……ねえ、綾花さん」
「はっ、はい！」
「なんか僕……試されてる？」
きょとんとする綾花は、どんな顔をしていたか自覚がないのだろうか。
幸せそうに微笑む彼女が可愛いだけでも問題なのに、期待するような眼差しまでされたなら、珪だって誘われたいのは山々だ。
でも、まだ『僕のだ』と堪能していないうちに見せびらかすのも気が引けて、こうして理性を抑え、なんとか人気の少ない場所までやってきた――とは、さすがに言えなかった。
「……いや、この先にね、綾花さんに見せたい場所があって」
サプライズは難しいねと笑いながら歩む珪に連れられたのは、帰路とは逆の灯台から南へと下る道。
小さな浜辺があるだけのそこは急な階段もあるせいか、すれ違う人もいなかった。
丘を楽しむ人の喧噪が遠い。まるで、秘密基地へと向かっているかのようだ。
「あった、これだ」
珪が足を止めたのは、木立の連なるトンネルの途中。
海と空を切り抜くように枝葉が不思議な形を作っていて、緑のフレームに水平線を閉じ込めているのが印象的なそこは、思わず綾花も立ち尽くして魅入ってしまった。
「……ハート、ですか？」
毎日の成長に手入れが追いつかないのか、少々いびつな形ではあるけれど、確かにハートだ。
寄せては返す波音に、木漏れ日の粒。静けさが降りてくる中で、空気の層の中でふわりと舞った。
繋いでいた手は背中に回され、いつしか景色も忘れて互いを魅入り――どちらからということもなく、２人は重ねるように目を伏せた。
春の午後。
芽吹いた若葉が、光に向かってそっと揺れていた。
綺麗に響き渡れば良いことがあるとされ、未来を願う恋人たちはもちろん、家族連れや友達同士、おひとり様だって制限はない。
猫恋の鐘に繋がる列へ並びながら、綾花はふと空に目をやった。
朝と変わらず快晴の空は、去年の秋とはまるで違う。もっと高くて澄んでいたあのときは、２人の関係だって違っていた。
――素敵な本と巡り会えるといいよね。
誤魔化すように笑った珪は、この鐘の謂れを知っていた。だから、あえて『一緒に鳴らしてもいい理由』を考えてくれたのだと……そう、思うことにしている。
そして先月の春。恋人として丘に来ることが叶ったその日は、空が霞がかっていた。
小雨に見舞われて、宣誓書もすぐには出せないと言われたけれど、彼の言葉を信じて今日まで待った。
そして、今。
霞が晴れ、鮮やかな青に染まりつつある空の下で、２人は鐘を鳴らす。
憧れで終わらせず、恋人宣誓書には猫神と天女の祝福を受けることができたし、きちんと季節に置いてかれずに、２人の関係も巡っているのだと実感できた。
手を握ってくれる珪の温もりが力強い。たくさんの言葉をくれた彼は、どんな気持ちで今日を……あの日の続きを、歩もうとしているのだろう。
「……鳴らしますね」
綾花がそっと綱に手を伸ばし、それを包み込むように珪が手を添える。
小さく深呼吸したのを合図にして、２人は少しだけ強く引いた。
――カラン、コロロロン。
澄んだ音が、空と海の青を貫くように響いていく。
まるで、今日の空気そのものが揺れるような……そんな、澄んだ音色だった。
余韻に浸るように珪を見上げる。春の陽射しが彼の髪に差し込み、柔らかい影を作っているのを、少しだけ期待するように見つめてしまって。
「……行こうか」
次の人も待っていると歩き出す珪は、何も間違っていない。けれど、綾花の胸で小さな波紋が広がった。
祝福の音は確かに鳴った。今まで鳴らした音よりも、輝いているような音だった。
だから、もう少し。ほんの、あと少し。
「あ、あの……これから、どうしましょうか。新しい縁結びグッズ、あったり……」
高台から降り、少し開けたところに出ても珪の足は止まらない。どこへ行くのかと、まさかデートは終わりなのかと、綾花は緊張を鎮めるために話題を振り続けた。
「そうだ、パンフレット！ 私の部屋へ見に来ませんか？ 予約も早いほうがいいと思いますし」
戸惑うような声音になってもなお、珪は何も答えずに足を進めていく。
そうして灯台近くまでやってくると――彼は、綾花の肩に額を乗せて大きな息を吐いた。
「……ねえ、綾花さん」
「はっ、はい！」
「なんか僕……試されてる？」
きょとんとする綾花は、どんな顔をしていたか自覚がないのだろうか。
幸せそうに微笑む彼女が可愛いだけでも問題なのに、期待するような眼差しまでされたなら、珪だって誘われたいのは山々だ。
でも、まだ『僕のだ』と堪能していないうちに見せびらかすのも気が引けて、こうして理性を抑え、なんとか人気の少ない場所までやってきた――とは、さすがに言えなかった。
「……いや、この先にね、綾花さんに見せたい場所があって」
サプライズは難しいねと笑いながら歩む珪に連れられたのは、帰路とは逆の灯台から南へと下る道。
小さな浜辺があるだけのそこは急な階段もあるせいか、すれ違う人もいなかった。
丘を楽しむ人の喧噪が遠い。まるで、秘密基地へと向かっているかのようだ。
「あった、これだ」
珪が足を止めたのは、木立の連なるトンネルの途中。
海と空を切り抜くように枝葉が不思議な形を作っていて、緑のフレームに水平線を閉じ込めているのが印象的なそこは、思わず綾花も立ち尽くして魅入ってしまった。
「……ハート、ですか？」
毎日の成長に手入れが追いつかないのか、少々いびつな形ではあるけれど、確かにハートだ。
寄せては返す波音に、木漏れ日の粒。静けさが降りてくる中で、空気の層の中でふわりと舞った。
繋いでいた手は背中に回され、いつしか景色も忘れて互いを魅入り――どちらからということもなく、２人は重ねるように目を伏せた。
春の午後。
芽吹いた若葉が、光に向かってそっと揺れていた。
あとがき
担当マスター：
浅野 悠希
ファンレターはマスターページから！
この度はリクエスト頂きありがとうございました、浅野です。
まずは、ずっと覚えててくださりありがとうございます！
通常シナリオで、チラッと登場しただけのアイテムに終わるかなと思っていましたが、
まさかこんなにも欲しいと思ってくださるなんて……とても嬉しいです。
幸せそうなお二人を書けて楽しかったです。
これからも、いろんな所で仲を深めてくださいね！
まずは、ずっと覚えててくださりありがとうございます！
通常シナリオで、チラッと登場しただけのアイテムに終わるかなと思っていましたが、
まさかこんなにも欲しいと思ってくださるなんて……とても嬉しいです。
幸せそうなお二人を書けて楽しかったです。
これからも、いろんな所で仲を深めてくださいね！
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2025年06月20日
- 参加申し込みの期限
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- 2025年06月27日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2025年06月27日 11時00分
