（恋≒友情＋笑顔×喧嘩）×感謝＋記憶＝記念写真　∴よろしく！｜リアクション

（恋≒友情＋笑顔×喧嘩）×感謝＋記憶＝記念写真　∴よろしく！

　アウトレットに向かう道中でも、莉鳥の口数はいつも通り少なめだ。
　誰彼構わず誘いに応じることがない上、誘いに応じても特別盛り上がることはない。それは決して隣を歩く琉歌に壁を作っているのではなく、性分みたいなもの。
　だからか琉歌も気にしている様子はなく、無理に何かを聞き出そうとするような話はしなかった。
　後輩の面倒を見ているとか、春の記録会のことだとか。
　相変わらず一定の距離は保たれたままなのは、ある意味で様子を窺われているのだろう。
　それが心地よいかと聞かれたら、迷うところではあるけれど――不快とは思っていないから、こうして次があるのだと思う。
「椎井先輩っ！　なんか、イベントやってるみたいですね」
　適当に相づちを返している間に、アウトレットへと着いた。吹き抜けの広いイベントスペースでは、可愛らしいオブジェが立ち並び、別フロアでは貸衣装まである本格スタジオも用意しているのだとか。

（恋≒友情＋笑顔×喧嘩）×感謝＋記憶＝？？？
　大きく書かれた、謎の式。
　ここへ来ると決まったときに、店選びも全て任せっきりにするのはと思ってHPを見て知ったイベント。
（……恋人の日、か）
　そういう単語を聞いて、未だ決まって思い出すのは元彼だけど、その当時さえこんなイベントとは縁がなかった。じゃあ、今回縁のあった琉歌は、どうだろう。
　単なる先輩後輩という関係ではなくなっているが、友人というのでもなく。もちろん恋人……というのでもなく、一言で言い表すことのできない関係。
　上手く説明出来そうにもないが、それでも莉鳥はさして困っていなかった。
　誰かに説明を求められたでも、琉歌を紹介したいでもない。……何より琉歌が、答えを求めていないように見えるから。
（気にはなっているんだろうけど……少なくとも、そう感じる）
　今は踏み込まないでいてくれているのか、ただ本心を掴ませない子なのか。
　相変わらず飄々とした様子に振り回されている気もするけど、それは言葉の少ない自分も同じかもしれない。
「……撮るの？」
　興味を示さなければ回避できたとわかっていながら、莉鳥は呆れたように口にしていた。
　フォトスポットはたくさんあって、ピンクや赤のハートに溢れたもの、白と青を基調としたウェディング風、それから虹やあじさいなど季節モチーフまで様々。そのどれもに列をなすのは、仲の良い恋人たちか親友、姉妹で――きっと、『答え』を出せない関係などいないのだろう。
「えっ、いいんですか!?」
　気のない返事で流されるとでも思っていたのか、キラキラした笑顔を向ける琉歌は最後の一押しを待っているよう。……こんな顔をされてしまえば、さすがの莉鳥も断りづらい。
「あんまり可愛すぎない、普通なのがあればね」

　写真のできあがりを画面越しに確認すると、琉歌は即決で２枚買うことを決めた。
　簡単な紙製のフレームならプレゼントしているということで、それを選びながら印刷されるのを待つ。
「ここ以外でも、イベントやってるんですね」
　本格的なフレームを作るならという紹介から、何故か押されている鰯料理まで。今回のオマケフレームと共に紹介されている案内を見つつ時間を潰せば、すぐに写真は仕上がった。
　受け取り確認で満足している琉歌と違って、莉鳥は少し驚いたような顔で写真を見ている。
　任せてくださいと琉歌が意気込んで見繕った、サンビタリアに囲まれたフォトスポット。
　手前にはずらりと生花の花壇が並んでいて、中程にある風鈴棚にもガラス製の風鈴がたくさん飾られていて、その中にもサンビタリアの造花が入っていたり、カラフルに描かれていたりと華やかだ。
　背景の草原と青空のコントラストが合わされば、２人で花畑へ来たような１枚に仕上がっていたのにも驚いたけれど。
（……私、こんな顔してたのね）
　さっき画面で見た時には、よくわからなかったけれど。こうして手元で見てみると……莉鳥は微笑んでいた。
　といっても、淡く小さな微笑みだ。普段の莉鳥を知らない者からしたら、素っ気ないかもしれない。
「ありがとうございます、椎井先輩！　すっごく嬉しい……宝物にしますね」
　大げさにはしゃぐ琉歌は、あくまで莉鳥と撮れたことに喜んでいる。けれど、彼女が莉鳥の表情の変化に気付いていないわけもなく。少しばかりの恥ずかしさと戸惑いに、莉鳥は黙って写真をそっと鞄へしまった。
（悪からず思っている、ということかしらね）
　チラリと横目に見たイベントタイトル。
　まだあの式に相応しい答えは出ないけど、今の関係を『奇妙』以外に表すことが出来るのなら。
　……意外とそこには、当たり前の答えがあるのかもしれない。

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あとがき

担当マスター：浅野悠希
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みなさまご参加ありがとうございます、浅野です。

季節イベントもやりたい！　ということで、いきなり６月のイベントでした。
恋人だったり、そうじゃなかったり……関係は様々でしたが、お楽しみ頂けたでしょうか。
このあとも、ゆっくり時間が動くものとリアルタイムイベント、両方書きたいと思ってます。

ちなみに、イベントについてはブラジルの恋人の日が元ネタですが、占いに関しては創作です。
ご参加いただいた方には個別で結果をお送りしますので、ぜひそちらも楽しんでくださいね。

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何からの形で応援頂けますと、めちゃくちゃ喜びます。
お時間ありましたら、よろしくお願いします～！

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