GW、どこに行く？｜リアクション

GW、どこに行く？

「結構渋い趣味してるんだね」
　ショーを待ち列に並びながら有沢茉奈は、隣にいる彼氏、閑野カノンに言った。
　自慢の彼氏である大学生のカノンは、日本人の父親とフィリピン人の母親との間に生まれた日比ハーフだ。
　ゴールデンウィークのデートの行き先は「忍者ＶＳ侍！　映画村アクションショー」だ。
「実は時代劇が好きなんだ。父方のおじいさんが大の時代劇好きで、よく一緒に時代劇の再放送や大河ドラマを見ていたよ」
「そうなんだ……おじいさんは、今は？」
「あ、今も元気にしているよ。だからスマホでアクションショーを撮って、おじいさんに送ってあげようと思って」
「カノンって優しいなあ」

　ようやく列が進み、ショーが始まった。
　いかにも時代劇風の音楽と共に、忍者が手裏剣を投げたりバック転をしたりしながら侍と戦う。
　侍のほうも負けずに見事な殺陣を見せ、息を呑む戦いとなった。
　スマホを高く構えアクションショーを録画しながら、カノンは目をキラキラさせてショーに見入っている。
　そんな姿を見て、茉奈はにんまりする。

「面白かったね」
「うん、結構かっこよかった」
　カノンには負けるけどね、と胸のうちでつぶやきながら茉奈はふと近くの看板に気づいた。
「あ、忍者体験や殺陣体験ができるって書いてあるよ？」
「面白そうだね」
「どんなものかやってみたいかも。両方でいい？」
　目を見かわし、二人は頷きあって両方とも申し込んだ。

　まずは忍者体験のコーナーへ向かう。
「忍者体験って忍者の装束を着るのかな、と思ってたけど……」
　あいにく衣装は子供用しか用意されていなかった。
　的があり、そこへ向かって手裏剣を投げるらしい。
「茉奈、お先にどうぞ」
「それじゃ……えいっ！」
　適当に投げた手裏剣は、思いのほか中心近くに刺さった。
「やったあ！」
「すごいな、茉奈」
　カノンも褒めてくれて、結構楽しめた。
　次に投げたカノンの手裏剣も、いいところに決まった。
「すごい！　さすがカノン！」
「子供のころ紙の手裏剣で練習したからね」

　次は殺陣体験へ。
「やっぱり迫力があって凄いよね」
　刀の持ち方を説明され、茉奈は言われたとおりに振り下ろすが、けっこうバランスをとるのが難しい。
　だがカノンは姿勢よく構え、初めてとは思えない太刀筋だった。
「カノン、かっこいい！」
　茉奈はカノンの殺陣体験の姿を撮影して、彼のスマホに送ってあげた。
「ありがとう、これもおじいさんへ送るよ」
　嬉しそうなカノン。
　何をしていても絵になるけど、カノンの殺陣をしている姿はとびきりかっこいいな、と思う茉奈だった。

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