GW、どこに行く？｜リアクション

GW、どこに行く？

　朝永真深は、クラスメートで親友の手島ゆかりに電話した。
「GW何する？　それとも家族でどこか行く予定あるの？」
　と真深が尋ねると、
「特に予定はないけど」
　とのことで、
「じゃあ三つあるイベントのうちどこかへ行く？」
　とチラシを写メして相談した。
「うーん、【Ze Pet】はこの前行ったばかりだし、映画村は何となくそんな感じじゃないし……」
「それじゃ、ハイキングかな」
　天気さえよければ割とはずれないイベントだ。
「天気予報どうなってる？」
「大丈夫そう」
「それじゃ、決まりだね」

　当日、真深はハイキングに適したTシャツにジャンパー、パンツスタイルで集合地点へやってきた。
「おはよー」
　似たような格好のゆかりが手を振る。
「いろんな人たちがいっぱい来てるね」
　見回すと、カップルの姿もあった。
「ここで彼氏ゲットできるかな」
　などとゆかりが言うので、
「逆ナンしに来たの？」
　真深が突っ込んだ。
「うーん……機会があったら」
　きょろきょろ周囲の人を眺めるゆかりは、半分本気のようだった。

「あ、可愛い花が咲いてる」
　ハイキングコースの脇に咲く花を見て、真深が言った。
「ほんとだね。これなんていう花？」
　ゆかりが尋ねるが、真深も知らない。
「……オオイヌノフグリだね」
　不意に後ろから声がかけられ、二人は振り返った。
　さっきのカップルの彼氏が花に視線を向けていた。
「そうなんですね」
「ありがとうございます」　
　二人がお礼を言うと、青年は頭をかいて照れた様子だった。
（大学生かな？）
　べたべたするわけでもなく、感じのいいカップルだな、と思う。
　

　それからしばらくすると、前方を歩いていた老人がふらつき、遅れだした。
「大丈夫ですか？」
　ゆかりが声をかける。
「大丈夫よ……ちょっと膝が痛いだけ」
「よかったら支えますよ」
「ありがとう、すみませんね……」
　真深はお婆さんの手を取って、支えて歩きだす。
「荷物持ちましょうか」
　ゆかりも荷物を持つのを手伝うのだった。

「あと少し……ゴール！」
　無事寝子温泉に到着し、おばあさんを待っていた孫らしき人に引き渡した。
「本当にありがとうございました」
「どういたしまして」
　何度もお礼を言われ、ゴールしたのと良いことをした達成感を二重に感じる。

「さて、温泉入ろうか」
「うん」
　二人は寝子温泉でゆっくり汗を流した。
　疲れがじんわりと溶けていくようだ。
　さっぱりしてお風呂から上がると、さっきのおばあさんと孫が待っていた。
「これ、気持ちばかりですけどもらってください」
　寝子饅頭の入った手提げを渡された。
「いえ、そんなつもりじゃ……」
　遠慮したけれど、ぜひにと言われ受け取って二人で分けることにした。

「とてもいい一日だったね」
「そうだね、逆ナンはできなかったけどおばあさんを助けられたし」
　ねこーひー牛乳を飲みながら、二人はゆったりとくつろぐのだった。

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