春はピクニック☆｜リアクション

春はピクニック☆

（目的地よりも、僕にとっては『ウォルター先生』が引率のチームになれるかが重要なんだよね……）
　稲積柚春は、行き先を決める前にウォルター・Bへ事前調査することにした。
「三夜湖コースだよぉ」　
「オッケー。お昼は期待してて。今度は２人でピクニックに行こうね」
　と約束して、柚春は希望の用紙を提出したのだった。

「さて、腕によりをかけてお弁当を準備しなきゃ」　
　もちろん自分の分だけではない。
　ウォルターとお弁当を一緒に食べたくて、ちょっと多めに豪勢に準備した。
（おかずの交換とかできるかもしれないし、料理上手だねって褒めてくれるかもしれないし！）
　最善は尽くすけれど、引率教師は何かと忙しいし一緒に食べられるとは限らない。
「その時は「おやつ作り過ぎちゃって」って言って渡そう」
　とレモンのパウンドケーキも作り包んだ。
「もちろんカプギアのворも一緒！」

　当日。
「うん、ворっていうんだ。どこに行くときも一緒だよ」
　柚春は新しいクラスメートと楽しくお喋りしていた。
「あ、いい景色。ворと写真撮ろう」
　途中で写真を撮ったり。さりげなくウォルターの姿を探したり。
　そうこうしていると、あっという間に目的地に着いた。
　柚春は目を閉じて、山の空気を嗅いだ。
（今の季節はどんな香りが楽しめるか、ちょっと楽しみだったんだよね）

（ワットは……）
　周りを見渡すと、すぐにブロンドの髪を見つけた。
（ふふ『ウォルター先生』の顔してる）
　はしゃぎまわる男子生徒をたしなめているようだ。
（僕とのデートの時は、もっと子供みたいにはしゃぐことだってあるし、もっと……特別な顔で笑ってくれる）
　ちょっと優越感に浸る柚春だが、ふと心配になった。
（それって、僕がワットを好きだからそう見えてるだけかな？　ワットには今日の僕……どう見えているんだろ）

　考えていても始まらない。
　柚春は何食わぬ顔でウォルターに近づき、声をかけた。
「ウォルター先生、今日のお昼は？」
「……ああ、リュックが軽いと思ったら忘れてきちゃったなぁ」
　情けない顔をしてみせるウォルターに目配せして。
「もし忘れちゃったなら、一緒に食べませんか。遠足が楽しみで作り過ぎちゃって……ダメ、かなぁ」
　首を傾けて見せる柚春。
「お弁当が無駄になっては大変だからねぇ。それじゃ、分けてもらおうかなぁ」
　ウォルターが答え。
　二人は目立たないよう端のほうへ行き、お弁当を広げるのだった。

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