いたいのいたいの、とんでいけ｜リアクション

いたいのいたいの、とんでいけ

　さいごの腹痛　

　お昼のチャイムが鳴った。
　あれからすっかり元気になった英二は、クラスメイト何人かと昼食を食べに学食へ来ていた。
　同じテーブルには、朝挨拶を交わした修もいる。
「それにしても今日は、よく走っていたな」
「ああ、まあ……そう、だね」
　修の言葉に、若干気まずいものを覚えつつ英二は答え、ずずずっとラーメンをすする。
「最近運動不足かなって思って、それで」
「そうか。奇遇だな。俺も少し前から、体を鍛え始めたんだ」
　英二がとっさにそれっぽいことを言うと、真意を知ってか知らずか修は話を合わせた。
「あれ、そういえばさ」
　と、ここで同じテーブルで食事をしていたクラスメイトが声をあげた。
「八神くん、今日なんか歩き方おかしくない？　ほんとに鍛えてるー？」
「あー、うちもそれ思った。朝黒板消し叩いてた時から、なんか変だったよね」
「なっ……」
「言われてみれば、ここに来るまでもなんか歩き方がぎこちなかったような」
　英二がそれに同調すると、テーブルを囲んでいた生徒たちの視線が修へと集まった。
「……」
　これは、逃げ場がないな。
　観念した修は、ゆっくりと口を開いた。
「……筋肉痛なんだよ。腹筋のしすぎで」
　一瞬の沈黙。その直後に、クラスメートたちの明るい笑い声が響いた。
「笑うなよ、結構深刻なんだぞ……」
　そう、実はここにもひとり、腹痛に悩まされる者がいたのであった。
「週末ランニングの距離を伸ばしたのがまずかったか……いや、それよりも帰宅後の腹筋が原因か……」
　自分の行動を思い返すと周りが「やりすぎ」と笑顔になり、つられて修も笑っては脇腹を抑える。
　トレーニングの成果が徐々に出始めていることに嬉しくなり、ついやりすぎたことを後悔しつつ、こんな痛みに襲われないような体を目指そうと、修が決意を新たにした瞬間である。

　そして、回復したからといって調子に乗ってラーメンをずるずるすすっていた英二は、午後の授業前、三度目の腹痛に襲われることになる。
「イ……イチョウ王国……」
「ん、王国？　何を言っているんだ？」
　修が尋ねると、英二は顔を赤くして首をブンブンと横に振った。
　はたしてイチョウ王国の平和は守られるのか。
　それはまだ、誰も知ることが出来ない。

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あとがき

担当マスター：山中にいな
ファンレターはマスターページから！

参加してくださった皆様、ありがとうございました。
山中にいなです。

登校中や授業中にお腹が痛くなる……ほんとにホラーですよね。
私も経験があるので、その時のことを思い出しながら楽しく書かせていただきました。
ちなみに私は、腕とかをつねってどうにかお腹の痛みを紛らわせるタイプでした！
いえ、全部でどんなタイプが何種類あるかは分からないんですけどね。笑

ではでは、また次のシナリオでお会いできることを、楽しみにしています！

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