バレンタイン・アソート｜リアクション

バレンタイン・アソート

【一緒に作るチョコレート】
　数日前のこと。
「今年はバレンタイン当日に、チョコを渡したいです。というわけで、ウォルターさんの時間を、僕にください！　また一緒にバレンタインチョコ作りましょう～。一緒に作れば、僕はウォルターさんに手作りを渡せるし、僕もウォルターさんの手作りを食べられますから。一石二鳥というやつです」
「それはいい考えだねぇ。じゃあ、十四日は七瀬の家に行くねぇ」
　……というやりとりがあり。
　二月十四日のバレンタイン当日。倉前七瀬の家には、ウォルター・Bが訪れていた。
　二人ともエプロン姿で、キッチンに立っている。
「今回は、ソシソンショコラ……いわゆるチョコサラミにしようかな、と思います」
　七瀬がテーブルの上に並べた材料を示して、ウォルターに言った。
「僕はチョコの方を調理しますから、ウォルターさんは具材の方をお願いします。ナッツ類はそこの袋に入れて、上からその棒で叩いて細かく砕いてください」
「了解」
　七瀬の指示に、ウォルターがうなずく。
　二人は手分けして調理を開始した。
　七瀬が板チョコを細かく刻んだり、生クリームを鍋に入れて沸騰させたり、その生クリームを入れて混ぜてチョコを溶かしたり……とやっている間、ウォルターはといえば。

　ガンガン！　ガンガン！

　ひたすら袋に入れたナッツ類を棒で叩いて、砕いている。
　ちなみにこの棒は、普段はクッキーの生地などを伸ばすために使うものだ。
「これ、なんだか楽しいねぇ。お菓子作りには、こういう工程もあるんだねぇ」
　ガンガンやりながら、ウォルターは楽しそうに七瀬に言う。
「たまにありますね」
　七瀬もうなずいて笑った。

　更にナッツ類を砕いていたウォルターが、手を止めた。
「このぐらいでいいかな」
　言われて七瀬が見れば、袋の中のナッツ類はほどよく砕けている。
「はい、大丈夫です。僕の方も、いい感じにチョコが溶けました」
　うなずいて七瀬は、ウォルターに自分が混ぜていたボウルを示して続ける。
「では、ウォルターさん、具材をドバっと入れちゃってください」
　言われてウォルターは、ボウルの中のチョコの上に袋の中身と、別に置いてあったドライフルーツを、ドバっと入れた。
　七瀬がそれをヘラでチョコにしっかりと混ぜ込む。
　これで生地は完成だ。
　七瀬はそれを二等分してラップ二つに包み、冷蔵庫に入れる。
「あとは、固まるのを待つだけです」
「出来上がりが楽しみだねぇ」
　七瀬に言われて、ウォルターは楽しげに笑った。

　三十分後。
「チョコサラミ完成ですー。結構簡単でしたねぇ！」
　ジャーン！　と七瀬は、冷蔵庫から固まったチョコを出して来た。
　ラップを取って切り、皿に盛り着ける。
「それじゃあウォルターさん、僕からのバレンタインチョコ、どうぞ召し上がってください」
「ふふ、出来立てを食べるというのも、いいねぇ」
　七瀬の言葉に、ウォルターはいそいそと席に着いた。
「お酒もありますよ。チョコに合いそうなウィスキーやワインを用意しました～」
　言って七瀬は、ウォルターの前に酒のビンとグラスを置く。
「至れり尽くせりですねぇ。じゃあ、ワインからいただこうかなぁ」
　ウォルターはうれしそうに言って、ワインを開封するとグラスに注いだ。そして、まずはチョコを手に取り、口に運ぶ。
「美味しくできているといいですが……どうです？」
　少しだけ心配げな顔で尋ねる七瀬に、ウォルターは満足げに咀嚼したチョコを飲み込んだ。
「これはすごいねぇ。簡単なのに、とても美味しい。見た目も食感も楽しいねぇ」
「気に入ってもらえて、よかったです」
　彼の感想に七瀬はホッとして笑顔になると、自分も一つチョコを手に取る。
　そのあと二人は、チョコサラミを口にしながら、最近読んだ本の話題で盛り上がった。
　そうしながら、七瀬はふと胸に呟く。
（ハッピーバレンタイン。今年もこうして、ウォルターさんと一緒にこの日を過ごせたことに）
　そして心の中でそっと乾杯するのだった。

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：織人文
ファンレターはマスターページから！

マスターの織人文です。
参加いただき、ありがとうございました。

甘々なもの、楽しいもの、ちょっと悲しいものなど、いろいろなバレンタインがあって、書かせていただきながら、私も楽しかったです。
また、チョコレートの種類やレシピなどを調べるのも楽しく、勉強にもなりました。
参加いただいたみなさまにも、楽しんでいただけていれば、幸いです。

それでは、またの機会がありましたら、よろしくお願いいたします。

↑ページトップに戻る

バレンタイン・アソート

あとがき

シナリオ

シナリオデータ

シナリオスケジュール

参加キャラクター一覧