いざっ勝負！！！！！！｜リアクション

いざっ勝負！！！！！！

　月原想花は猫鳴館の玄関を出た。
「行ってきます」
　小さくそう言って、歩き出した。
（さて、何を買おうか）
想花は猫鳴館の自治委員である。こうして休日など時間があるときに輪番で食料品などの買い出しに出かけるのだ。
今日目指すのは参道商店街だ。
「あ、お肉屋さんか」
　目に入った精肉店、しかし、生ものは最後に購入した方が良いだろう。
（調味料とか常温の食材と野菜を買ってから肉と魚か）
　しかし通り過ぎようとした精肉店から軽快な営業トークが聞こえてきた。
「！？」
見ると、お店とお客で激しい値切りバトルが展開されているのだ。
「無理無理。ヘタレなぼくには」
一度は背中を向けたものの、普段はなかなか買えない牛肉が安く買えるかもしれないと思うと、やっぱり参戦してみようか、という気持ちに。
「さあ、さあ、今から一分ごとに一円引きだー！　早いもの勝ちだよ！　待ってたら取れれるかも知れないよー！」
「一分で十円にしてよ！」
「これ、四百円切ったわよね！　買うわっ」
「ちょっと、二パックはずるいわよ！」
　店長が手を叩く。
「時間で値引き、よーし、一分二円だ。一パック三百五十円まで後何分だ！？」
　まさにトーク値引きバトルだった。
「おっと、黒毛和牛のステーキ肉が登場だ！　一分で五円引きするぞー。そして切り落しもパック詰めされるからね！」
　想花はお客をかき分けつつ、挙手をする。
「そ、それ下さ」
　横から入ってきた歴戦の主婦が高らかに叫んだ。
「五円引きで頂くわ！」
「毎度ッ」
「あ、あの、パック詰めの切り落とし、一パック下さいッ」
　まだここに届いていないが、先回りだ。
「お、よく聞いてたね、お嬢ちゃん、よし、一円引きだッ」
　どうやら店長も気づいてくれていたらしい。
　すぐに店頭に並んだそれを包んでくれた。
「はいよー、またよろしくねッ」
　想花は早々に人混みを脱出。
「ふう」
　どうやら、勝利したらしい。

このページにイラストを設定する