いざっ勝負！！！！！！｜リアクション

いざっ勝負！！！！！！

　競泳用の水着に身を包み、仙藤蒼と仙藤紫は温水プールの入り口に立った。今日はのんびり気味に水泳の練習をすることになっている。
「んー、泳ぐのは久しぶりね」
　紫が準備体操をしながら言う。
「そうなの？　ふふ、私は先週泳ぎに来たよ？」
「ゲーマーの体力作り、ね。……元水泳部として言わせてもらえば、蒼は泳ぎのフォームが綺麗なのよね」
　蒼が目を瞬かせる。
「お姉ちゃん駄目だしと思わせといて、褒めてる？」
「ちょっと悔しいけど、蒼は真剣に体力作りに取り込んでるから、上達が凄いのよね」
　と、その時だった。ふと気持ちが高ぶった。
　お互いに顔を見合わせる。
「なんかよくわからないけど、お姉ちゃん、水泳で勝負よ！」
「ええ、そうね。勝負しましょ」
　妙な強制力に姉VS妹の水泳勝負が勃発。
　近くにいたスタッフに計測を頼んで、お互いスタート台の前に立つ。
　紫は足首と手首を回して準備体操をし始める。
(中学高校水泳部の私とゲーマーの蒼⋯⋯侮るわけじゃないけど、勝ちたいわ)
　蒼はゲーマーではあるが、長時間プレイに耐えられるよう、体力作りをしていることを知っている。
　そんな紫を横目に、蒼は準備体操を終えて、深呼吸をする。
(お姉ちゃんとは初めてよね。手強そうだけだど、私だって)
　体力作りとして始めたものの、日々上達はしている。それを試すチャンスだ。
　スタート台に並んで立つ。
　ちらっと紫を見ると、プールの先を見つめている姉の顔は凛々しく、スタイルの良いほっそりとした手足が競泳用水着からぴんと伸びている。
　蒼に気づいたのか、紫がこちらに視線を向けた。
「！」
「どうかしら、準備は？」
「うん、良いよ」
　蒼が言うと、紫が計測をお願いしたプールのスタッフに手をあげて合図をした。すぐにホイッスルがなる。
　瞬間、紫は水中へと躍りでる。プールの中へすーっと体が入っていく感覚、飛び込みは成功した。体が浮いてから、泳ぎ始める。
(まずはスタートダッシュ)
水をかくように、バタ足をする。クロールだ。蒼は飛び込みの瞬間に、素早くバタ足を始める紫に少し驚いた。リードされた。
(勝負っ)
　腕を大きく回して、水面に滑らかに滑らせ、ぐんぐん前へ進んで、紫の背中に懸命に食らいついていく。腕が重くなり始めている気がした。負荷がかかっているのかも知れない。
(そっか、水の抵抗を減らすんだ)
　追いかける蒼、調子を崩さず泳ぎ続ける紫。
　ラストスパートに入った。
(ここで、一気にっ)
　蒼がバタ足に力を入れ、さらに大きく腕を回す。
(やった！)
　紫の顔がほんの少し後ろに見える。
　このままゴールをと思った瞬間、紫のスピードが一瞬上がった。
(あ)
　最初にプールサイドに手をついたのは、紫だった。しかし、それは僅差だ。
「はぁ、はぁ」
　肩で息をしながら、顔を見合わせる。
「はぁ、残念。一回抜いたのに」
「さすがね、でも、水泳部としては負けられないわ」
　紫はにっこりと笑う。
蒼は決意する。
(体力作りも頑張ろっ)
「むー。あ、そうだ。今度は背泳ぎで勝負しない？」
「平泳ぎの方が勝負に向いてると思うわよ」
「いっそメドレーとかどう？　なんかやる気出てきちゃった」
この後、何回か勝負が続いた。

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