２０歳の空に希望を込めて｜リアクション

２０歳の空に希望を込めて

「もう２０歳の集いの季節なのね……懐かしいわ」
　ニュースを見ていた仙藤紫は、自分の「２０歳の集い」の日のことを思い出しました。

　たくさんの柄の中から迷った末選んだ晴れ着は、上品なクリームの地に白い牡丹の花の柄でした。
　美容院で髪もセットして、姿見に映った姿を眺めると。
（自分でもちょっと見違える感じ……）
　両親も妹も、綺麗だと褒めてくれました。

　父の車で送ってもらい寝子島スポーツセンターの前に到着すると、すでに多くの新成人がいました。
（少子高齢化というけれど、そんなことを感じさせない熱気ね）
　そんなことを思っていると。
「紫ちゃん？」　
　名前を呼ばれ振り返ると、そこにはどこか見覚えのある顔の女性が立っていました。
「……由奈ちゃん？」
　やはり晴れ着姿で見違えてしまったけれど、友人の川南由奈だとわかりました。
「よかった、見違えちゃったから人違いだったらどうしようかと思っちゃった」
「こっちのセリフよ。綺麗でびっくりしちゃった」
　由奈は、東京の大学に通っているはずです。
「久しぶりね。去年の春以来かしら？」
「うん。去年の夏は短期留学でイギリスに行っていたの」

　二人はしばらく立ち話をしました。
　ニャインでは色々と話をしていましたが、やはりこうして直接会って話をすると気持ちと気持ちが通い合っているという実感が湧きました。

「皆さま、本日は誠におめでとうございます……」
　町長の挨拶や来賓の挨拶などが続きましたが、思ったより式典はあっさりと終りました。
（寝子高の校長みたいにシトラス・ガムダン話をしなかったのであっという間って感じ）
　それなりに長かったはずですが、耐性がついたのはありがたいことかもしれません。

「ねえ、クラスのみんなと飲みに行かない？」
　他の子に声をかけられたらしい由奈に誘われました。
「そうね」
　１１月生まれですでに２０歳の誕生日を迎えているので、居酒屋はデビュー済みでした。
　他の同級生たちと会う機会もなかなかないし、晴れ着が汚れないか気がかりではありましたが、思い切って行ってよかったと思います。
「懐かしいわね。みんな元気だった？」
　高校生に戻ったように、懐かしく楽しい会でした。
　酔っぱらう子がいるのだけは高校時代と違いましたが、ご愛敬です。
「もう一軒行こう～！」
「ちょっと由奈ちゃん、飲みすぎよ」
「そういう紫ちゃんは、全然飲んでないんじゃないの？」
「そんなことないわよ……」

「う……頭痛い」
　つい酒が進んでしまい、翌日二日酔いに悩まされることになりましたが。

「あれも今思えばいい思い出ね」
　少しだけ大人になった今、紫はしみじみと思うのでした。

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