２０歳の空に希望を込めて｜リアクション

２０歳の空に希望を込めて

　綾辻綾花は、成人式が終わったあとそのまま、久しぶりに会った友達と食事に行きました。
「高校時代に戻ったみたい」
　２０歳になっているのでちょっとお酒も飲んで、最高に盛り上がりました。

「それじゃ、またね」
　友人たちと別れタクシーに乗った綾花ですが、自分の住所を告げようとして気を変えました。
（せっかくなので晴れ着姿を珪さんに見せに行きたいです）
　そこで、早川珪のアパートへ向かってもらったのでした。
　インターホンを鳴らすと、赤い晴れ着姿の綾花を見て出てきた珪が目を丸くしました。
「珪先生、似合いますか？」
　くるりと回って、綾花は珪の顔を見つめました。
（びっくりさせちゃったかな？）
　お酒のせいか、なんだか楽しくなっています。
「……ああ、とても似合ってるよ。成人、おめでとう」
　驚きが収まると珪は事情を理解したらしく、笑顔を向けてくれました。　
「ふふ、ありがとうございます。久しぶりに先生って呼びました。さっきまで高校生の気分だったから先生って呼びたくなったから」
「素敵な晴れ着だね」　
「これはお母さんが成人式に着てた着物です。体格も同じぐらいなので直してもらわなくてもぴったりです」
「いつもより大人っぽく見えるよ……少し顔が赤いみたいだけど？」
「成人式の後、久しぶりに会ったお友達みんなで食事してきたんです。ちょっとお酒も飲んできたので」
　酔っぱらってはいない、と思う綾花です。
「僕も綾辻さんのお祝いをしたいけど、まだ食べられそう？」
　気遣いながら尋ねる珪に、
「珪さんにお祝いしてもらえたら嬉しいです。それじゃ、一旦着替えてからまた来ますね」
　着物だと帯が苦しくなるのであまり食べられなかったのです。

　家に戻り洋服に着替えて、綾花は二度目のインターホンを鳴らしました。
「珪さん、お邪魔します」
「どうぞ。ワインがあるんだけど、君も飲む？」　
「はい。それじゃ簡単におつまみを作りますね」
　勝手知ったる台所、冷蔵庫を開けてプチトマトを洗ったりチーズを切ったりして、さっとおつまみを作った綾花。
　ソファーに並んで座ってワインを注ぎあいました。
「成人式おめでとう。乾杯」
「乾杯」
　冷えた美味しいワインが温まった体に心地よく染みていきました。
「成人式、どんな感じだった？」
「みんな晴れ着姿で、綺麗でした。こんなにたくさん同級生がいるんだってびっくりしました」
「食事会も盛り上がった？」
「ええ、とっても。そうだ、珪さんの成人式の思い出も聞きたいです。写真もあったら見てみたいな」
「さすがにここに写真はないな……男だから晴れ着でもないし、成人式に行くかどうか迷ったんだけどね。親に勧められて行ってきたよ」　
「昔の珪さんもかっこよかったでしょうね」
　お酒のせいもあってか口はなめらかになり、いっそう話は弾んだのでした。

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