初詣に行きましょう｜リアクション

初詣に行きましょう

　朝永真深は目を開けた。
「……ん」
　見慣れた天井。星ヶ丘の自宅の自室だ。スマホで時間を確認すると、一月一日の午前七時過ぎ。
　高校に入って最初の年のお正月だ。もう高校生活も三分の一が過ぎようとしている。
（なんか時の流れが速くない？）
　去年の今頃は高校生になることへの不安や期待が入り混じっている時期だったというのに、気づけば高校二年生が目前だ。
　ベッドから体を起こすと、遠くの方でしゃべり声が聞こえてくる。
（お母さん達、起きてるのね）
　会話の内容は聞こえないが、妙に安心感がある。普段仕事が超多忙なので国内外を飛び回っているが、正月はさすがに休みで、３日前に久しぶりに自宅へ帰ってきていた。
「んー」
　少し伸びをして、布団から出た。
　カーテンを開けると、真っ青な空が広がっていた。
「はあ、さむ」
　息が白い。
　部屋を出た真深はバスルームへと向かった。
　淡いタイル張りのバスルーム、軽く体を洗ってからのんびりと湯舟に沈む。朝日が眩しい。
　それから一時間ほど入浴を楽しみ、風呂から上がって歯を磨いて髪を乾かしたりと身支度を整え、着替えて食堂へ。
「おは……」
　言いかけてから、
「明けまして、おめでとうございます」
　改めて頭を上げる。
「ああ、明けましておめでとう」
　と、父。
「明けましておめでとう、真深。おせち出来てるから」
　母が笑う。
　テーブルには様々な料理が並べられていた。
　久々に三人でテーブルを囲む。
　三日間これを食べて過ごすのだが、こんなにたくさん食べれるだろうか？　と思ったり。
（毎年完食しちゃうからわからないよね)
「いただきます」
　久々のおせち料理は中々新鮮でおいしかった。
「栗きんとん、美味しいわね」
「ああ、作ったのか？」
　母と父の会話。
「有名な和菓子屋さんで買って来てくれたみたい」
　使用人の人が買い物に行ってくれていたらしい。手作りもあり、かまぼこや伊達巻など加工品もいくつか。
「真深、羊かん食べる？　好きだったでしょ？」
「え、そうだっけ？」
「ああ、小さい頃はそればっかり食べてたような気がするな」
「そうだっけ？」
　まったく覚えていなかった。小さい頃というのはいつのことやら。
「そういえば、最近どうだ？　学校は」
　おせち食べながらここ半年間のことを色々と話をしたりする。少々盛っているところもあるが。
　明日は東京の祖父母の家に行く予定だ。
　いつもと違う、正月の朝だった。

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