初詣に行きましょう｜リアクション

初詣に行きましょう

　ヒュー・ヒューバートと城山水樹は寝子電に飛び乗った。遅れそうになって、駅で走るなんて、久しぶりのような気がする。
　少し息が上がりつつも、お互いに目を合わせ笑いあった。
　ヒューは去年の春、水樹にプロポーズをした。現在は同棲中でまだ籍は入れていない。お互い婚約者という立場なのだ。
　雑談をしているとすぐに駅へ電車が到着した。
「ん、なんか人が多いわね」
「ほら、テレビで寝子島神社が紹介されてたから」
「あーやってた、やってた」
　正月の人混みはなんだか妙にわくわくする。
　まずは表参道商店街へ。水樹の実家は古書店を営んでいる。さすがに今日は正月休みのようだが、自宅部分の玄関から入って新年のあいさつをし、上がらずに神社へと向かった。
　道すがら、やはり人が多い。神社の鳥居をくぐると、すぐに列が出来ていた。
「ねえヒュー、お賽銭いくら入れる？」
　首を傾げる水樹。ヒューは少し考えて、
「どうしようかな」
「ふふ、もう決めてるでしょ？」
「そう見える？」
　一緒に暮らしていると、時々、心がつながることがある。
　元旦だけあって神社はかなりの人出だ。
　賽銭箱に行き着くまでに一時間はかかった。
　二人に同時に財布から千円札を出し、顔を見合わせる。
「あ、一緒？」
「一年に一回、だから」
「そうよね！」
　賽銭箱に千円札を投げ入れ、鈴を鳴らした後、手を合わせる。ヒューがちらっと、水樹の方を見ると、真剣な表情で、何か必死に祈っているようにも見えた。
　水樹はというと、
（気持ちは、同じよね？）
　そう心の中で呟いて、目を閉じる。

（神様、どうか……これからもずっと二人でいられますように）

　きっと、ヒューも想ってくれているに違いない。
　お参りが終わり、自然と足はおみくじが置いてある小屋へ。ここでも並んでいたが、そこまで長い列ではなかった。
　おみくじを引いてから帰ることに。おみくじも数種類あるが、
「恋みくじ……んー」
　水樹は少し迷ってから、ピンク色の可愛らしい恋おみくじではなく、普通のおみくじに手を伸ばした。
「こっちじゃなくていいの？」
「うん」
　ヒューが不思議そうにしているが、
（縁結びなんて。もう、結ばれてるんだから）
「！　見て！」
　水樹に言われ、そちらを見ると彼女がおみくじを開いていた。

『大吉』

「あ、凄い」
「やっったぁ！」
　水樹は思いっきりガッツポーズ。
「ヒューは？」
　急いでおみくじを開くと、
「……お揃い、みたいだ」
　水樹に見せた紙には、
『大吉』
　の文字が。
「もうこの一年は、いい年になるしかないわね！」
　お守りを買うという水樹、ヒューもお揃いにした。
　そして、破魔矢を購入。
「ん」
　神社を出たところで、水樹のスマホがなった。どうやら実家からの電話だったようで、おせち料理と雑煮を戴くことに。
「行こっか」
　人混みに紛れて冷たくなった手を繋いだ。
「そういえば、真剣に祈ってたみたいだけど」
「ん？」
　見ると、ヒューが少し真剣な表情でこちらを見ていた。
「何を、思ってた？」
　何やら緊張しているようだ。その様子に、水樹はクスっと笑う。
「気になる？　なら、ヒューのお祈りも教えて？」
　ヒューは辺りを見回し、そっと耳に口を近づけた。
「これからもずっと二人でいられますように……って」
　水樹は幸せそうに眼を細める。
「うん。私も。一緒にいようね」
　ヒューはこくりと頷いて、握る手に力を入れた。

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