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にょろっと巳（み）ラクル！新春☆初夢フェア２０２５ 富士編
なるほどあおいの言うとおりで、無重力クッキングはまるでドラマ、それもアクションドラマのようだった。
無重力空間での共同作業は、重力下でのものとはまるで勝手がちがうのだ。
「あおいさん、卵が逃げてる！」
「えっ、どこどこ！？」
透明な球体の中で浮かんでいた卵がシャボン玉のごとくはじけ、中身が小さな水滴となって無重力空間に広がった。
「わーっ、行っちゃだめー」
あおいは菜箸で液状の卵をかき集めようとするが、どうにもふわふわと逃げるばかりだ。
「よし、こうしよう」
彰尋はすっと手を伸ばし、ミールマシンから取り出した特殊フィルムをひろげる。半透明なフィルムに卵の粒を丁寧に誘導すると、ぴたりと吸着して一か所にまとめてしまった。
「わあ、すごい！ 彰尋くん、慣れてるね」
「水を集める訓練を何度か受けたからね。これ、けっこうコツがいるんだ」
彰尋はフィルムをボウルに入れて卵液を回収した。受け取ってあおいが泡立て器で混ぜる。なんとかなったところで今度は野菜だ。
「にんじん、かぼちゃ……あとほうれん草……っと」
ぷかぷか浮かんでいる野菜をあおいはつかみ、磁力固定式のカッティングボードの上に置く。
「これ、慣れると便利だけど最初は怖かったなあ。野菜がふわふわしてるから、包丁が当たらないんだよね」
「わかるよ。俺も最初、トマトにはずいぶん翻弄されたものさ」
彰尋の言葉にあおいは吹き出してしまった。
「でも、逃げられるのも面白いよね。ほら、こうやって……」
あおいはゆっくりと手を動かし、フワフワしがちなニンジンを、包丁を滑らせるようにしてカットした。花びら型にした輪切りが浮かび、光を受けてまるで小さなステンドグラスのようにかがやく。
「きれいだね」
「でしょ？ 彰尋くんもやってみてよ」
「よし、じゃあ、緑色を追加しよう」
彰尋はピーマンで、空中のステンドグラスにあざやかな色を加えた。
「さあ卵焼きを作るよ。フライパンは……ここ！」
あおいがフライパンを取り出し、磁力で固定されたコンロにセットした。コンロには微細なジェットで温度が調整できる機能があり、周囲への熱の影響を最小限に抑えている。
「ここにオイルを注いで……あ、流れない？」
うっかりしていた。オイルは注いでも丸まってしまうばかりだ。「どうしよう」と八の字眉毛になるあおいに、
「ここもフィルムの出番だ」
任せて、とばかりに彰尋がフィルムをひろげオイルの球体をつつんでフライパンの中心に移動させる。すかさず加熱すると、オイルがじんわりとフライパン全体にひろがりだした。
「やった、成功！」
「よし、次は卵液を投入だね」
無重力空間での卵焼きが、こうして形になりはじめていた。
「これってまるでパズルみたいだよね」
「そうだね。ひとつひとつの動きが計算されてないと、全部台無しになってしまう」
「ほら、焼き目がついてきた！」
無重力下でハンバーグを焼き、フライを揚げて野菜炒めも作った。最初はちぐはぐだったふたりの動きも、いつしか美しい連携を見せるようになっていった。無重力空間での弁当詰めにもなかなか苦戦したものの、ついに弁当箱のフタはおりたのである。
「はい、完成！」
彰尋の分、あおいの分、ひとつづつ。あまりに日常的で、家庭的なランチボックスだった。宇宙ステーションの管制室という、おおよそ料理に向いているとは思えない場所で、水中バレエを踊るようにして作ったものとは思えない。
「これならどんな冒険だって平気だよ！」
「たしかに、どこにでも行けそうだ」
水色に輝く惑星に、彰尋は目を向けた。
もちろん、弁当もだけど。
俺は、あおいさんが一緒なら、どんなところにだって行ける。
特別な人と、特別な弁当を作って未知の冒険に出られるなんて……俺って、きっと幸せ者だ。
◇ ◇ ◇
目が覚めたとき、彰尋は部屋のベッドの上にいた。
夢か――。
がっかりする。あの弁当箱が手元にないなんて。
しかし彰尋の気分を、NYAINメッセージの着信音が変えてくれた。
あおいさんからだ！
飛び起きて彰尋はアプリを立ち上げた。短い起動時間が何百倍にも感じられる。
『おっはよ～！ 今朝、お弁当作ったんだよ。なんと私ひとりで！』
リンク先を参照すると、ねこったーの投稿が表示されていた。
弁当作りを終えつつあるあおいの写真だった。撮影者はののこらしい。
……夢じゃない、のか？
彰尋はわが目を疑った。なぜって、つづいて着信したNYAINのメッセージには、
『彰尋くんの分も作ったからね♪』
とあったから。
無重力空間での共同作業は、重力下でのものとはまるで勝手がちがうのだ。
「あおいさん、卵が逃げてる！」
「えっ、どこどこ！？」
透明な球体の中で浮かんでいた卵がシャボン玉のごとくはじけ、中身が小さな水滴となって無重力空間に広がった。
「わーっ、行っちゃだめー」
あおいは菜箸で液状の卵をかき集めようとするが、どうにもふわふわと逃げるばかりだ。
「よし、こうしよう」
彰尋はすっと手を伸ばし、ミールマシンから取り出した特殊フィルムをひろげる。半透明なフィルムに卵の粒を丁寧に誘導すると、ぴたりと吸着して一か所にまとめてしまった。
「わあ、すごい！ 彰尋くん、慣れてるね」
「水を集める訓練を何度か受けたからね。これ、けっこうコツがいるんだ」
彰尋はフィルムをボウルに入れて卵液を回収した。受け取ってあおいが泡立て器で混ぜる。なんとかなったところで今度は野菜だ。
「にんじん、かぼちゃ……あとほうれん草……っと」
ぷかぷか浮かんでいる野菜をあおいはつかみ、磁力固定式のカッティングボードの上に置く。
「これ、慣れると便利だけど最初は怖かったなあ。野菜がふわふわしてるから、包丁が当たらないんだよね」
「わかるよ。俺も最初、トマトにはずいぶん翻弄されたものさ」
彰尋の言葉にあおいは吹き出してしまった。
「でも、逃げられるのも面白いよね。ほら、こうやって……」
あおいはゆっくりと手を動かし、フワフワしがちなニンジンを、包丁を滑らせるようにしてカットした。花びら型にした輪切りが浮かび、光を受けてまるで小さなステンドグラスのようにかがやく。
「きれいだね」
「でしょ？ 彰尋くんもやってみてよ」
「よし、じゃあ、緑色を追加しよう」
彰尋はピーマンで、空中のステンドグラスにあざやかな色を加えた。
「さあ卵焼きを作るよ。フライパンは……ここ！」
あおいがフライパンを取り出し、磁力で固定されたコンロにセットした。コンロには微細なジェットで温度が調整できる機能があり、周囲への熱の影響を最小限に抑えている。
「ここにオイルを注いで……あ、流れない？」
うっかりしていた。オイルは注いでも丸まってしまうばかりだ。「どうしよう」と八の字眉毛になるあおいに、
「ここもフィルムの出番だ」
任せて、とばかりに彰尋がフィルムをひろげオイルの球体をつつんでフライパンの中心に移動させる。すかさず加熱すると、オイルがじんわりとフライパン全体にひろがりだした。
「やった、成功！」
「よし、次は卵液を投入だね」
無重力空間での卵焼きが、こうして形になりはじめていた。
「これってまるでパズルみたいだよね」
「そうだね。ひとつひとつの動きが計算されてないと、全部台無しになってしまう」
「ほら、焼き目がついてきた！」
無重力下でハンバーグを焼き、フライを揚げて野菜炒めも作った。最初はちぐはぐだったふたりの動きも、いつしか美しい連携を見せるようになっていった。無重力空間での弁当詰めにもなかなか苦戦したものの、ついに弁当箱のフタはおりたのである。
「はい、完成！」
彰尋の分、あおいの分、ひとつづつ。あまりに日常的で、家庭的なランチボックスだった。宇宙ステーションの管制室という、おおよそ料理に向いているとは思えない場所で、水中バレエを踊るようにして作ったものとは思えない。
「これならどんな冒険だって平気だよ！」
「たしかに、どこにでも行けそうだ」
水色に輝く惑星に、彰尋は目を向けた。
もちろん、弁当もだけど。
俺は、あおいさんが一緒なら、どんなところにだって行ける。
特別な人と、特別な弁当を作って未知の冒険に出られるなんて……俺って、きっと幸せ者だ。
目が覚めたとき、彰尋は部屋のベッドの上にいた。
夢か――。
がっかりする。あの弁当箱が手元にないなんて。
しかし彰尋の気分を、NYAINメッセージの着信音が変えてくれた。
あおいさんからだ！
飛び起きて彰尋はアプリを立ち上げた。短い起動時間が何百倍にも感じられる。
『おっはよ～！ 今朝、お弁当作ったんだよ。なんと私ひとりで！』
リンク先を参照すると、ねこったーの投稿が表示されていた。
弁当作りを終えつつあるあおいの写真だった。撮影者はののこらしい。
……夢じゃない、のか？
彰尋はわが目を疑った。なぜって、つづいて着信したNYAINのメッセージには、
『彰尋くんの分も作ったからね♪』
とあったから。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2025年01月01日
- 参加申し込みの期限
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- 2025年01月08日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2025年01月08日 11時00分
