ケーキを食べよう！｜リアクション

ケーキを食べよう！

　その日倉前七瀬は、無性に甘いものが食べたい気分だった。
（カップケーキくらいしか手作りしたことなかったんですが、なんだか今日はやる気がもりもりわいているので、ホールのケーキに挑戦したい気分です！）
「ふむん、せっかくやけん挑戦してみましょうか」
　そうなると頭に浮かぶのは、ウォルター・Bの顔だ。
（ウォルターさんと一緒に作りたいけど、お忙しいから無理ですかねぇ……一応誘ってみよう）
　七瀬はスマホを取り出し電話してみた。
「あ、ウォルターさん。お忙しいかと思いますけど……いつかみたいに、僕の家でケーキを作って食べませんか？」
『いいねぇ、行くよ』
「え、いいんですか？」
　ガッツポーズしたい気持ちを抑えて、釘をさしておく。
「一緒に作るんですよ。味見係とかじゃありませんからね？」
『あまり自信はないけど、食べたいからねぇ』
「それじゃ、お待ちしてます」
　電話を切って、七瀬は考える。
「さて、どんなケーキにしますかね？」
　
「来たよぉ」
　しばらくしてウォルターが七瀬のマンションにやってきた。
「いらっしゃい。では一緒に楽しく作りましょう！」
　台所にやってきて身支度をしながらウォルターは尋ねる。
「どんなケーキを作るのかな？」
「作るものはウォルターさんの故郷の味を……とも思ったんですが、そういうのはウォルターさんの身近にもっと上手に作れる方がいるでしょうし、敵わないので、抹茶と小豆のパウンドケーキにします」
「それは楽しみだねぇ」
「和風なもの結構お好きですよね？」
「お見通しだね」

「まずはこの材料を……」
「よし、僕がやろう」
　珍しくウォルターもやる気になっているようだが。
「あぁっ！　ウォルターさん、材料はきっちり量ってください〜」
　アバウトに粉を入れようとするウォルターを、七瀬はあわてて止める。
「そうかい？　実験でもないし、メアリはいちいち計ってないみたいだけど……」
「熟練の方は目分量でいいんですけど、僕らみたいな素人はそれじゃだめですけん」
　わいわいしながら材料を計り、混ぜる。
　混ぜ始めてしばらくすると、七瀬の手がゆっくりになる。
「倉前、どうかしたのかい？」
「材料混ぜるの重労働です……。うう、ウォルターさん交代お願いします……」
「僕の出番かぁ」
「さすがウォルターさん、すいすい混ざりますね」
　混ざった生地を型にいれる。
（やっぱりウォルターさんと一緒だと楽しいです）
　オーブンのスイッチを入れながら、七瀬の口元はほころぶのだった。
「あとは待つだけだねぇ」　
「それじゃ、お茶でも飲んで待っていましょうか」

　のんびりお茶を飲んでおしゃべりをしていると、ケーキが焼きあがった。
「出来上がり！」
「ようやく食べられるねぇ」　
　ウォルターがオーブンを開け、七瀬がケーキを取り出す。
　さらに型から出し、切り分けた。

「「いただきます」」
　二人は同時に言って、ケーキを味わう。
「おいしい！」
「うん、これは美味いねぇ」
「初めて作りましたが、上出来な気がします。ウォルターさんと一緒に作って、一緒に食べているからですかね！？」
「そうかもしれないねぇ」
　ウォルターの笑顔が眩しい。
「また一緒に作りましょうねぇ！」
　食べ終わるころには、次が楽しみになっていた。

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