風のしっぽがゆらゆらり｜リアクション

風のしっぽがゆらゆらり

　雪に反射して輝きを増した街灯やネオンの明かりが、雪に覆われた夜の街並みをより神秘的に見せている。
　函館山の美しい夜景を、鴻上彰尋と七夜あおいは、温かい飲み物を手に眺めていた。

「そういえば、函館山のハート伝説って聞いたことある？」
　お茶をちびちび飲み進めていたあおいが、彰尋の言葉に小首を傾げる。
「どんな伝説なの？」
「夜景から『ハート』や『スキ』って文字のパターンを見つけられると、願いが叶ったり、幸せになれるんだって」
「じゃあ、せっかくだし私たちも探してみようよ」
　笑顔で告げるあおいへ、彰尋もまた笑顔でうなずいた。
　そうして夜景を眺めていると、あおいが「あっ」と声をあげる。
「見つかった？」
　うなずいたあおいが、少し悪戯っぽく笑う。
「うん。でも教えてあげるのは、彰尋くんも見つけてからね」
「答え合わせってこと？」
　苦笑しつつ、彰尋は思う。もしかしたら、気付かないうちに自分は見つけていたのかもしれないと。
　だって、楽しそうなあおいの姿が見られる今が、幸せだから。

「夜景、キレイだね」
「……はい。とってもキレイです」

　隣で一緒に夜景を眺めていたウォルター・Bの呟きに、倉前七瀬はこくりと頷いた。
　そんな七瀬は先ほどから、ずっと夜景の方ばかりを見つめている。
　というのも、ウォルターとこの景色を共有できていることが嬉し過ぎて、かえって彼の方に視線を向けられないからだ。
　無意識のうちに、七瀬の手はウォルターのコートの裾へと伸びる。それに気付いたウォルターが、もう半歩ばかり七瀬との距離を詰める。
　彼の浮かべた微笑みに、七瀬はまだ気づいていない。

「――くしゅっ」
　少し冷たい風が吹いたと思うと、五十嵐尚輝が小さなくしゃみをした。
「尚輝さん、大丈夫ですか……？」

　御巫時子が問いかけると、尚輝は「平気ですよ」と少し鼻をすすりながら言う。そして言ったそばから、またくしゃみをした。
　そんな彼を心配げに見上げていた時子は、バッグから一本のマフラーを取り出した。彼女自身が首に巻いているのと、おそろいの柄だ。
　先ほどの風のせいか輪をかけてボサボサ髪になった尚輝へ、マフラーを手に時子は告げた。
「尚輝さん、もう少しこっちへ寄ってもらえますか……？」
「え？　……ああ」
　一拍遅れてその意図に気付いた尚輝が、「そのくらいは自分で」というのだけれど、時子は譲らなかった。夜景を映して潤んだように輝く瞳が、尚輝を見つめる。
「私が、したいんです。……ダメ、でしょうか？」
　そこまで言われれば、尚輝に断る理由があるわけもなく。
「後で、温かい飲み物でも買いましょうね……」
　そっと歩み寄った尚輝の首に、時子はマフラーを巻いてあげて微笑むのだった。

「あら、きみどうしたの？」
　ヴィーゼ・ベルンスタインが声をかけた相手は、一匹の猫だった。こんな山の上に、いったいどうやって？
「なーん」
　一声鳴いて、猫はヴィーゼの足にすり寄ってくる。その姿がとても可愛らしくて、ヴィーゼはたまらず猫を抱え上げていた。
　鳴きながら体をすりすりしてくる様子もまた愛らしくて、ヴィーゼは表情を緩ませる。

「そうだ、せっかくだから一緒に写真でも撮る？」
　わかっているのかいないのか、「にゃあ」と応える猫に微笑んで、ヴィーゼは夜景をバックに猫と一緒に自撮りをするのだった。

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あとがき

担当マスター：天村花海／風雅宿／黒羽カラス／菊華伴／御影イズミ
ファンレターはマスターページから！

★黒羽カラスマスターより

普通のシナリオでは、すっかりご無沙汰の黒羽カラスです。今回、私が担当した月は「１・２・５」でした。
１月の舞台となりました広島には伯父がいまして、よく地御前の牡蛎を送っていただきました。晩御飯のグレードが格段にアップします。
定番の牡蛎フライにタルタルソースをたっぷりかけて食べます。鍋や焼き物、グラタンにもしました。
それでも無くならないので牡蛎カレーの暴挙に出たことも。贈り物としては嬉しいのですが、とにかく量が多くて……。
５月の奈良公園は馴染み深いです。夏の夜の浮見堂で陽気に酒盛りをしました。近くにトイレもあって快適で、気付けば空が明るくなっていました。
２月のさっぽろ雪まつりは直に見たことがありません。そもそも北海道に行ったことがないのでネットの情報に頼りました。
執筆のおかげで行った気分になりました。時間があれば実際に北海道まで出向いて暴食の限りを尽くしたいと思います。

最後にご参加、ありがとうございました。イラストの中で楽しまれた皆さんと同様に私も小旅行を満喫しました。
らっかみ！でたくさんのＰＣさんと出会い、執筆を通じて触れ合い、胸がいっぱいです。また、どこかでお会いしましょう。

★菊華　伴マスターより

こんにちは。
３月、４月、９月分を担当しました菊華です。
今回もこの企画に携わることができ、心より嬉しく思います。

どのイラストも「ここ行ってみたいな！」と思うようなもので、見ていて楽しかったですし、
この『旅の一コマ』の執筆もとても楽しい物でした。機会があれば僕も行ってみたい……！
そして、寝子島でのあれこれを経てPCさんの関係性も変わったりしていて感慨深いものも感じていました。

それでは、この辺りで。
また縁がありましたら宜しくお願いします。
菊華　伴

★御影イズミマスターより

初めましての方は初めまして、御影イズミです。
カレンダー企画、６月と１１月を担当させていただきました。

皆様の素敵なイラストを拝見出来て、眼福でした。
どんなことをしているかな、と想像を膨らませて執筆することが出来ました。
お気に召していただければ幸いです。

★天村花海マスターより

こんにちは、天村花海です。
ご参加ありがとうございました。
7月と８月を担当させていただきました。
素敵なイラストの世界に入り込んだ気持ちで、皆さまの心情を想像しながら楽しく書かせていただきました。
イラストを選ぶのは悩みましたが、こんな楽しみもあるのだなと知れました。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

★風雅宿マスターより

去年でファイナルだと思っていたらなんと継続されることになったカレンダー特典シナリオ、風雅は10月と12月を担当させて頂きました。
去年の特典あとがきでは少々しんみりとした思いでしたが、一転して今年はテーマのこともあって、風雅自身もどこか旅を楽しむような気持ちで執筆させて頂きました。
今回も、カレンダーの彩りの一部となれていれば幸いです。
それでは、ありがとうございました。

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シナリオ

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