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あなたの最期
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窓際にテーブルが置かれていた。向かい合うように二脚の椅子があり、その一脚に
緋埜 伊吹
が座る。黒いマスクが顔の大半を隠し、僅かに覗く双眸を窓外に向けた。
小さな男の子を挟むようにして両親が笑顔で並ぶ。幼い我が子に歩幅を合わせているのか。ゆっくりと歩いていた。
男の子がせがむような姿を見せた。両親は快く手を繋ぎ、歩きながら引き上げた。何度も繰り返し、その都度、男の子は足をバタバタさせて空中散歩を楽しんだ。
仲睦まじい家族の姿に好感が持てる。通り過ぎたあとも伊吹は目で追い掛けた。
「お待たせ」
緋埜 由紀美
がトレイを両手で持って現れた。コーヒーカップを伊吹の手前のテーブルにそっと載せて、ティーカップを向かいに置いた。
「口に合えばいいけど」
言いながら由紀美は中央に大皿を置いた。こんがりと焼き上がったクッキーは不揃いで焼き加減も違う。
「一つ、貰う」
伊吹は端の焦げたクッキーを摘まむとマスクの下部をずらす。現れた口で食べようとした。
「もっと顔を見せて」
対面の椅子に座った由紀美がアイスグレーの目を細めた。窺うような目をした伊吹が、いいのか? と聞いた。
「いいのよ。暴力を振るっていたあの人(夫)はいない。それにね。いくら顔が似てきても関係ないわ。伊吹は世界に一人しか、いないのよ」
「トラウマなんじゃないのか。本当にマスクを外していいのか」
言葉を強めた。その目はとても優しく、悲しそうでもあった。
「ごめんね。伊吹に苦しい思いをさせて。今は少しでも長く、顔を見ていたい。たくさん話をして少しでも長く一緒にいたい。この気持ちは信じていいわ」
「わかった」
伊吹はマスクを外した。その状態でクッキーを齧る。
「甘さとほろ苦さが、ちょうどいい」
「ありがとう。頑張って手作りした甲斐があったわ」
由紀美は欠けたクッキーを摘まんで口に入れた。小気味いい音を立てて笑みを浮かべる。その姿を見ながら伊吹はコーヒーを飲んだ。
由紀美は心配そうに声を掛ける。
「ミルクや砂糖を入れていないけど、それで本当に良かった?」
「ブラックは好みに合っている」
「そう、みたいね。お母さんなのに初めて知ったよ」
「言わなかったか?」
「今まであまり親子らしい会話をして来なかったから」
寂しそうに笑う由紀美に伊吹は少し怒った顔で言った。
「今からすればいい」
「そうね。今からでも遅くないよね」
「もちろんだ。一日は思った以上に長いからな」
二人は視線を交わし、共に柔らかい表情を浮かべた。
夕陽で空が赤く滲む。遠くでカラスの鳴く声が聞こえる。どこか物悲しく、キッチンでジャガイモの皮を剥いていた伊吹の手を止めた。
由紀美は鍋の蓋を開けて味見をしている。味は上々なのか。一層、目が優しくなり、弱火に変えた。コロッケを揚げる油の温度を確かめて伊吹に目を留める。
「もしかして指を切った?」
「いや、平気だ」
一言で終わらせるとジャガイモの皮剥きを再開した。
隣で由紀美は成形したコロッケを次々と油の中に入れていく。パチパチと爆ぜる音を聞きながら伊吹に聞いた。
「ジャガイモと牛肉とニンジンは具で入れるとして、他に入れたいものはある?」
「糸こんにゃくかな」
「肉じゃがに糸こんにゃくはよく合うよね」
弾んだ声でコロッケを引っ繰り返す。
その様子を伊吹は横目で見た。嬉しさよりも悲しさが勝るのか。目を逸らし、静かに深呼吸を試みる。
「……こんな日がくるとは思わなかった」
「どうしたの、急に」
由紀美は微笑みを絶やさない。落ち着いた声でコロッケを揚げていく。合間に鍋の火加減を気に掛けた。
「母さんと分かり合えた。必要なのは会話だったんだ。そんな単純なことに気が付かなかった」
「でも、気付けたよね。お母さんは、ただ嬉しくて……」
由紀美は目尻を指で拭う。目にした伊吹は何も言わず、手元に集中した。
食卓に数々の料理が並ぶ。その量に驚きつつ伊吹は手を合わせた。
「いただきます」
「いっぱい食べてね」
「母さんも」
返された一言に由紀美は、どうかなー、と子供のような笑みを浮かべた。
食べ進めていくうちに伊吹は気付いた。
「これ、全部、俺が好きなものだ」
「わかった?」
笑いを含んだ声に、わかるよ、と早口で返す。
「一緒に食事をすると美味しく感じるね」
「母さんが作ったからだ」
「口が上手くなったね」
「本当のことだ。早く食べないと味噌汁が冷める」
「伊吹との会話が楽しくて、つい」
お椀を手にした由紀美は生麩と一緒に汁を啜る。ゆっくりと味わうように咀嚼して息を吐いた。
「お出汁の香りが利いて美味しいね」
「コロッケもなかなかだ」
伊吹は大きな一口で齧る。中の熱さに少し口が開き、小刻みに息を吸い込んだ。
その様子を由紀美は楽しそうに眺めていた。
最期の時が近づいていた。
由紀美は布団で横になっていた。側には伊吹がいて目に涙を溜めている。
「そんなに悲しまないで。お母さんはとても楽しかったわ」
「もう、やれることはないのか。まだ、なにか」
その言葉を遮るように由紀美は力なく頭を左右に振った。儚い笑みで我が子に手を伸ばす。その手を伊吹は両手で掴み、瞬きを忘れて見入った。
「本当なら病院で寝たきりになって、最期を迎えていたわ。担当してくれた病院の先生には感謝しているのよ。それと余命宣告って当たるのね。びっくりしたわ」
「そんな笑顔で、言うことじゃない。俺は母さんに、もっと生きて、欲しいんだ」
「ありがとう。あと、少し言わせて」
言葉が徐々に遅くなる。瞼が少し下がってきた。
伊吹は顔を近づけて、聞くから、と握る手を強めた。
「学校帰りに、病院にお見舞いに来てくれて、ありがとう。学校生活の話も聞けて、嬉しかった。卒業前なんだけど、卒業、おめでとう」
「ありがとう。話ならまだ聞く。どんどん言ってくれ」
「伊吹の顔に、触れたい」
由紀美は瞼を閉じた。伊吹は母親の手を頬に当てる。撫でる手が優しく、涙が零れた。
「……泣かないで……伊吹、愛しているわ……」
「俺も。母さん、愛している」
「……うれ、しい」
由紀美は微笑み、眠るようにこの世を去った。
伊吹は自身の頬に母親の手を強く押し当てた。その姿のまま声を殺して泣き、最期を看取るのだった。
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3人まで
シナリオジャンル
NPC交流
オールジャンル
定員
10人
参加キャラクター数
6人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2024年11月29日
参加申し込みの期限
2024年12月06日 11時00分
アクション投稿の期限
2024年12月06日 11時00分
参加キャラクター一覧
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