秋の味覚が大豊作☆｜リアクション

秋の味覚が大豊作☆

◆週に１度の時間を大切に

　志波拓郎、大学１年生で迎えた秋。
　彼は恋人の高梨彩葉と過ごす今日を心待ちにしていた。彼女は東京の製菓専門学校に通っているため、デートは週に一度。そして心待ちにしていたのは彩葉も同じだった。
　いま寝子島のサイゼリニャでは秋の味覚フェアをやっている。彩葉はそれを知ってデートの日に来店しようと彼を誘っていた。拓郎が駅で待っていると、彩葉が駅構内から出てくるのが見えた。彼は駆け寄って笑顔で出迎えた。

「やっほー拓郎！　待っててくれたんだね、ありがとう」
「今日会えるのが、楽しみだったから……」

　その返答に彩葉も嬉しそうだ。２人で雑談しながらサイゼリニャへ向かう。会っていない日も電話でやりとりしているのに、話題は尽きない。そして『秋の味覚フェア』と大々的に宣伝する店に着いた。
　彩葉はきのこたっぷりドリアとモンブランケーキを、拓郎は新じゃがグラタンと葡萄のパフェを注文。料理が来るまで２人でおしゃべりを楽しむ。

「そういえばね、前に専門学校の友達とカラオケに行ったんだ」
「へぇ、カラオケ……！」
「拓郎のことを紹介したいなって思ってるんだ。楽しい子達だから、仲良くなれると思うよ」
「紹介、少し照れるけど……そうだね、それじゃいつかのタイミングで、東京の何処かに遊びに行こう……！」
「行こう！　拓郎は大学生活どう？」
「大学…大変だけど楽しい、新しい友達もできた」
「拓郎も大学の友達ができたんだ」

　同じ学生といっても大学生と専門学校生だと過ごし方も違う。その違いを互いに報告し合うと、意外な発見もあって楽しい。

「いつかその友達にも会ってみたいな」
「意外と甘いもの好きな人多いから、今日食べたパフェも美味しかったら情報回さなきゃ……」
「専門学校は実習が多くて、お菓子を作ることが多いから大変なんだよね。だから実習で作ったものを会う日に持ってたりしてるんだ」
「そういうことだったんだ」
「いつも食べてくれる拓郎とお兄さんに感謝だよ」
「お菓子はいつでもぜひ！　全部食べたいどれも美味しいし、彩葉さんからもお菓子の香りがするような……なんて」
「ふふふ、毎日お菓子を作ってるからじゃないかな」

　会話は途切れることなく、弾み続ける。料理が運ばれてきて、初めてその会話が止まった。

「料理来たか、美味しそう……！　まずは写真を１枚……」
「私も写真を撮ろうっと」

　２人とも写真をさっと撮って、いただきますと声を揃えた。

「きのこたっぷりのドリア、熱々で美味しい～」
「秋ならではだよな。じゃがはホクホクして美味しい」

　美味しくて箸が進む。メインをあっと言う間に食べ終えるとデザートに移る。

「葡萄がみずみずしい……！」
「ケーキは栗の甘みがたっぷりで中の生クリームもさっぱりしてるや」
（そういえばお袋が作るグラタンはたまに栗が入っていたな）

　それもまた家庭の味というものかもしれない。

「ごちそうさまでした」

　食べ始めたときのように、２人で手を合わせる。その後も他愛ないことを話していたら帰る時間になった。会計を済ませて退店しても会話は続いている。

「秋の味覚、最高」
「ほんと美味しかったねえ」
「フェア終わる前に、また来よう」

　これから彩葉は東京に戻る。拓郎がそっと手を差し出すと、彼女はその手を握り返した。２人で手を繋いだまま歩いているうちに、駅に到着してしまった。お互いに名残惜しいと思いつつ、仕方なく手を離す。

「じゃあね、拓郎。夜に電話するからいっぱいお喋りしようね」
「ああ、また夜に」

　拓郎は電車を見送る。そして完全に見えなくなったところで帰路に着いた。

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