秋の味覚が大豊作☆｜リアクション

秋の味覚が大豊作☆

◆これからのために

　稲積柚春はキッチンに立って、食材の並ぶテーブルを眺めている。彼女のなかには新たな命が宿っている。予定日はクリスマス付近で、現在は体力づくりなどが必要な時期。

（健康に気を遣いながら、秋の味覚を楽しみたいけど……）

　考えた末、ウォルターが買い出しに行ってきて今に至る。

「秋なすは嫁に食わすな、っていうほど美味しいんだよね。美味しいものを食べさせて、口を肥えさせないために……っていう意地悪な意味もあれば、身体を冷やす食材だから妊婦には向かないって優しさもあるんだとか」
「なるほどねえ」
「こういうのって、イギリスにもあったのかな。ワットはこういうのって信じるタイプ？」

　彼女にとって、彼と過ごすささやかな日常は幸せな時間だった。こういう会話の積み重ねも楽しみの１つだ。改めてテーブルに目を向けて、これから作る料理を考える。

（あんまり力んだり力仕事も良くないよね……栗の皮むきとかはどうだろう？）

　もしウォルターに心配されたら止めるつもりだが、美味しい秋メニューを食べてほしかった。

（沢山のキノコを使った炊き込みご飯や、サンマの塩焼き、里芋の味噌汁……それから柿の入ったポテトサラダ、サツマイモの甘露煮、カボチャのプリンとか。ふふ、作るのが楽しみだな！）

　柚春が料理を行うのを彼は見守っていた。手伝いたいのかもしれないが、彼は家事全般が苦手だった。それでも柚春はあえて声を掛ける。

「ワットも一緒に作ってみる？」
「え？　でも……」
「味付けとかは僕がやるから、食材を洗ったり切ったりをお願いしようかな」
「……わかった」

　背中を押されたウォルターが嬉しそうにキッチンに立った。下処理が必要なものや力仕事はウォルターが中心になって行う。しかし包丁を上手く扱えず、切った食材が不揃いに並ぶ。

「ごめん」
「大丈夫。切り方が揃ってなくても手料理って感じがして楽しいよ！」

　そうして出来上がった料理は、少し不格好かもしれないが間違いなく美味しかった。今日の失敗を今後に活かせたらいいね、と柚春は食卓で語る。

（なんでもできるかっこいいパパになるためにも、ね）

　彼女は期待を込めた眼差しでウォルターを見つめた。

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