その日、あなたに出会った｜リアクション

その日、あなたに出会った

　寝子高の入学式。
　朝永真深は試着の時以来、はじめて制服に袖を通した。
　二種類あるうち選んだスカートはチェック柄だ。
（なんだかくすぐったい感じ。慣れたら平気になるのかな）

　クラスは１年３組だった。
　制服のスカートはチャック柄の子もいれば無地の黒の子もいる。
　講堂に入る際胸にリボンをつけられ席につくと、入学式が始まった。
　校長先生の式辞を聞く。
（……シトラス・ガムダンって誰？　よくわからないんだけど……）
　先生の話はとても長ったらしくて、少し緊張していたはずが眠気を催すようで……。

（はっ）　
　うとうとしているうちに校長先生の話は終わったらしい。
　祝電の披露、生徒会長のあいさつなどが進む。

「新入生の誓い」
　ぼんやりしていたが、説明を聞いて眠気が吹き飛んだ。
（黄色いリボンをつけた人が対象……って、あたしがそうなの？）

　いきなりマイクが回ってきた。
　少し困惑したけれど──真深は余所行きの声で述べた。
「新入生の朝永真深です。この３年間、いろんなことをあたしらしくチャレンジしてみたいと思います。３年しかない高校生活をとことん楽しみつくすことを誓います」
（こんな感じかな？　知らんけど）
　拍手が巻き起こったので、問題なさそうだ、と安心した。
　ほかの人たちの挨拶を聞いていると、顔面を触りにいくので逃げずに実験台になってくださいね、という子がいた。
（面白い子ね。学校でメイクってOKなの？）
　ちょっと興味が沸いた。
　他にもいろんな子がいろんな誓いをしていた。

　それから校歌の斉唱があり、教師の紹介が行われた。
「１年３組、生物を担当しとる牛瀬巧や。よろしゅうな」
　担任はガタイがよさげな関西弁の先生だった。
　こうして式が終わり、教室へ戻った。

　真深は名前の書かれた窓際の席に座り、ぼんやり外を眺めていた。
（窓際でよかった。退屈な時も外を眺められるし）
　そんなことを思っていると。
「ねえ、あなた寝子島の人？」
　前の席に座っている女の子に話しかけられた。
「そうだけど……あたしは朝永真深。あなたの名前は？」
「あ、さっき新入生の誓いやってたから聞いてたよ。私は手島ゆかり、よろしくね」
　聞いてみると、彼女は島外から来たらしい。
「それじゃわからないこと多いよね。寝子高のことは私もわからないことばかりだけど」
　話をしているうちに、なんとなく気が合うとすぐに気づいた。
「学校が終わったら、シーサイドタウンへ遊びに行こうか」
　いつの間にか、そんな話をしていた。
「でも、道案内はあまり期待しないでね。あたし、方向音痴なんだ」
　真深の言葉にゆかりは目を丸くし、そして笑った。

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