ショートドラマは突然に｜リアクション

ショートドラマは突然に

◆話題の踊り

　リリエル・エーテライトは寝子島を散策していた。今日はいい天気なので、どこへ行こうか迷っている。

「海を見に行って、そのままアウトレットでお買い物もいいですね」

　そんなことを考えていたら笹川帆太と名乗る人物に話しかけられた。

「そこの君！　ショートドラマを撮ってみない？」
「ショートドラマ？」
「そう！　ショート動画で１分くらいにまとめるから！」

　耳なじみのない言葉が連発される。
　しかし帆太がみせる屈託のない表情や素振りから、楽しそうな様子が窺える。ショート動画がどういうものかよく分からないが、その雰囲気を感じ取って協力することにした。

「それで私は何をすればいいんですか？」
「まずはこの衣装に着替えてほしい」

　帆太はあらかじめ用意していた衣装を取り出し、これを着て踊ってほしいと伝える。ミューチューブで話題になっている踊りの１つだ。参考に他の人が踊っている動画を見せる。

「……ふむふむ、この衣装に着替えて、歌を歌いながらダンスをすればいいんですね！　歌も振り付けも簡単で楽しそうですし、やってみます！」
「ありがとう！」

　少し練習する時間を取り、リリエルが踊りを覚えたところで帆太がスマホを構えた。音楽を再生すると同時に撮影を開始した。

「せーの、へいぶーぎうぎにゃんにゃん♪れっつごーばーりばーりにゃんにゃん♪」

　ノリノリでネコダンスを踊るリリエル。体を動かしていると楽しさが増してくる気がした。夢中で踊っているうちに曲が終わり、心地よい汗がじんわり流れる。無事に撮影を終えた帆太が彼女に駆け寄った。リリエルは汗を払いつつ彼を見た。

「この歌も踊りもノリがよくて楽しいですね！」
「でしょ！」

　帆太はスマホをリリエルに渡して確認を促す。

「あ、これが撮れた動画ですか……見てみたいんですが、どうやって見ればいいんでしょうか？」

　帆太はスマホで再生できない彼女に驚きつつ、丁寧に再生方法を教えてくれた。自分が画面のなかでノリノリで踊っているのは少し不思議な気分だった。これに簡単なエフェクトを加えて投稿するらしい。

「協力してくれてありがとう！」
「お役に立てたなら良かったです」

　帆太が去った後、彼女はさきほど踊った曲を口ずさみながら散策に戻った。

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