マジックポットたちと、不思議な魔法の庭｜リアクション

マジックポットたちと、不思議な魔法の庭

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「見たことない場所に、４本足の歩く花瓶やティーポット！」

　京極花音は目の前の光景に驚いていた。
　彼の周りですりすりと身体をすりつけたり、ぴょんと飛び跳ねるのは不思議なマジックポット達。
　そして、広大な庭園には、色とりどりの花がまぶしいくらい咲き誇っている。

「正直、最初はバケモノかと思って焦り倒したが、どうやらお化けの類じゃないらしい……良かった」

　花音はまじまじとマジックポット達を見る。

「しかも、見れば何か困ってる様子だし。困っているなら手伝うぜ」

　花音がそうつぶやくと、マジックポット達は嬉しくてたまらないように喜んだ。
　てくてく歩くマジックポット達に招かれて、花音は花壇へと訪れる。

「……にしても。見たことない花が沢山咲いている」

　花音は目線を巡らせた。

「花屋バイトってだけの俺でもテンション上がる光景だ。花が大好きな静さんに見せたら、きっとすごく喜ぶんだろうなぁ！」

　思い浮かべたのは暁月静がふわりと微笑む姿。
　花音の想い人。
　きっと、彼女がこの光景を目の当たりにしたら……。
　世界の輪郭が煌めいて、温かい光で満ちていく。

「……手伝う代わりに、１枚だけでいいからここの花の写真、撮らせてくれねえかな？」

　花音の願いに、マジックポット達はこくこくと答えた。
　それからマジックポット達と一緒に花壇の手入れをしたり、力仕事をこなしたり。気がつけば、庭園は綺麗になっていた。
　やがて、マジックポッド達は駆け出して何度も花音を振りかえる。

「ん？　来てほしい、って言ってるのか」

　花音がそう口に出すと、マジックポッド達はうなずいた。
　どうやら、絶好の場所へと誘いたいようだ。
　花音がマジックポッド達に導かれて歩いていくと。

「こりゃ、なんて光景だ……！」

　目の前に飛び込んできた光景が、花音の視界を幻想的に染め上げた。
　辺り一面を春色に染め上げているのは七色に光る花々だ。視界を鮮やかに彩ってくれる花弁は、何にだってなる事ができることを思わせる。
　もし、ここの花の写真を彼女が見たら……そう思うだけで心臓がドキドキした。
　カメラを持つ手さえも震える。それでも写真を撮ろうとした矢先。

「もしかして、京極さん？　わあ、やっぱり、そうですか！」

　突如、聞こえてきた声に、心臓が激しく高鳴った。
　花音はまるで稲妻に打たれたような気持ちになってしまう。

「実は、ここの庭園に迷い込んでしまったんです。京極さんもですか？」
「えぇ、まぁ……」

　バイト先の常連である静の疑問に、花音はしどろもどろに答える。
　小柄で清楚で可愛らしい静に盛大な好意を寄せている花音としては、ここで出会ったのは願ったり叶ったり。
　だけど、彼女の方はかなり天然でそのことに気づいていないようだ。
　静は見渡す限りの花々を見つめて微笑む。

「この場所、素敵ですね。綺麗な歌が聞こえてきます」
「歌……ッスね」

　花音は動揺しつつ耳を澄ませると、美しい歌声が聞こえてきた。
　花々が歌っているのだろうか。素敵な調べが満ちている。

（こんなにキラキラした花が歌ってるなんて、気になりすぎるだろ！）

　花音は口元を緩ませる。そして、幻想的な旋律に耳を傾けた。咲き綻んだ音色の心地よさに耳を傾ければ、それだけで心が震える。
　その時、静が花音に思わぬお願い事をしてきた。

「京極さん。もしよろしければ、写真を撮って頂けませんか？」
「だ、大丈夫ッスよ。任せて欲しいッス。責任をもって写真を撮らせて頂きますんで」

　花音は焦りつつ、カメラを握った。
　優しく花咲く静の笑顔は幻想的で、まるで魔法を見ているようだった。
　花々がその願いを空にまで届けて、この場に響かせるように――。

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