マジックポットたちと、不思議な魔法の庭｜リアクション

マジックポットたちと、不思議な魔法の庭

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　綾辻綾花は、早川珪先生とともに見知らぬ場所へと迷い込んでいた。
　デート中に迷い込んだのは不思議な雰囲気の家の庭。

「珪さん、ここはどこなんでしょう」
「分からない……。だけど、庭園のようだね」

　綾花が抱いた疑問に、珪先生は口元に手を当てて、考え込む仕草を見せる。
　見渡してみると、二人がいる場所は綺麗に手入れされた庭園のようだった。

「あっ、珪さん！　こっちに家があります！」

　誰かいないかなと家の窓をそっとのぞいたら、まるで魔法使いが住んでいそうな雰囲気だった。

「魔法使いのお家なんでしょうか？」

　綾花が視線を巡らせるものの、家の主人の姿は見当たらない。どうやら、留守みたいだ。
　辺り一帯の景色は素晴らしく、目を引かれるものもある。

「庭園デートも楽しそうですね」
「そうだね。行こう」

　綾花は珪先生と手を繋いで庭園を歩き出す。
　見たことのない色とりどりの花は、これから訪れる温かな季節を思わせる。
　新しいものに出会う喜びは、珪先生と一緒ならひとしおだ。
　その時、どこからか聴こえてきたのは綺麗な歌声。
　それは綺麗な水の流れのように優しくも、どこか春のように温かい旋律だった。
　その歌声を追いかけて行ってみると、花が揺れながら歌っているようだった。　

「珪さん、綺麗な歌ですね」

　綾花は珪先生と一緒に、どこか希望を彷彿とさせる歌声に耳を傾ける。
　歌う花が作り出した調べが、二人がいる庭園を満たしていった。

「不思議な歌だね」
「はい。初めて聞くけど、心地よい歌ですね」

　この優しい時間がずっと続けばいい、そう考えてしまうのは珪先生が隣にいるから。
　そう思って、この幸運な時間を綾花は噛みしめる。
　庭園をさらに歩いていくと、広がったのは一面に光る花。
　光る花はキラキラと色んな色に輝いている。
　離れてみると、それはまるで光る虹のような神秘的な光景だった。
　綾花が花に触れても消えなくて、優しい光を放っている。

「夜に見てみたいですね」
「ああ、いいね。幻想的だ」

　珪先生と過ごす夜の花の彩り。きっと、もっと素敵だと思ったから。
　庭園に息づく虹の光は、これからも綾花の記憶に鮮明に残り続けるだろう。

「あっ。この花、触れると開くみたいです。珍しいですね」

　綾花は珍しい花に心を躍らせる。

「珪さんと一緒に触れてみたいです」
「一緒に触れてみるかい？」
「はい」

　珪先生の手が重なり、綾花は花に触れた手にいっそう熱を感じた。夢の中みたいに心地よい時間に浸る。

「花びらがハート形ですね。いい香りです」

　綾花が顔を近づけると、花が照れたようにうつむいた。恥ずかしそうにしている仕草は愛らしい。

「可愛いですね」
「そうだね」

　視線を上げた綾花は気になっていたことを口にした。

「珪さんの気になる花や好きな花は、どの花ですか？」
「うーん……光る花かな」

　庭園で過ごす時間は楽しくて話が弾む。

「綾辻さん」
「あっ！　あれって、ポットでしょうか？」

　そこに足のついたマジックポット達が二人に近寄ってきた。
　どうやら、この庭を今、管理運営しているのはマジックポット達みたいだった。

「ポットさん、これを届けてくれませんか？」

　綾花は猫の形のメモ用紙に、庭園が素晴らしかったなどの感想と『ありがとうございました』という言葉を添える。
　それをマジックポッド達に渡した。素敵な庭園の持ち主に届けてもらうために。

「庭園デート、楽しかったですね」
「そうだね。不思議な体験ができて楽しかった」

　綾花は珪先生に向けて、陽だまりの笑顔を浮かべる。
　愛しい人と過ごす。そんな時間が何よりも大切だと知っているから。
　だから、これからももっともっと、幸せな時間が続きますように。

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