マジックポットたちと、不思議な魔法の庭｜リアクション

マジックポットたちと、不思議な魔法の庭

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「不思議な植物がいっぱいだ！」

　稲積柚春は思わず、声を弾ませた。
　目の前には、見たことのない植物が溢れている。

「道具があれば、香りを持って帰れるかも。お手伝いをしたら貸してもらえないかな？」

　柚春は期待をにじませ、周囲を見回した。
　そこには足のついたマジックポッド達が、庭の花々へと水をやっている。

「育てているのは……ポット？　うーん、意思疎通はできるかな」
「うーん、そうだねえ」

　ウォルター・Bはしばし考え込む素振りを見せた。

「話してみないと分からないなあ」
「よし、ワット、話してみようよ！」

　柚春はウォルターの手を引いて、マジックポッド達の前に立った。
　すると、二人に気づいたマジックポッド達が嬉しそうにぴょんと飛び跳ねる。

「ここの植物は触っても大丈夫？」

　柚春の疑問に、マジックポッド達は大丈夫とうなずいた。
　話すことはできないけど、意思の疎通を図ることはできるみたいだ。二人は庭園のお手伝いをすることに。

「お花はデリケートなことが多いけど、ハーブの葉は案外触っても平気なんだ。フレッシュな香りは、触れて手に移った香りを楽しむのが一番なんだよ」

　柚春はハーブの葉に触れると視線を上げる。

「ほら、ワットもやってみて！」

　すると、ウォルターは柚春が触れた、すぐ近くのハーブの葉へと手を伸ばした。
　不意に、柚春とウォルターの視線が重なる。
　ハーブの葉に触れた手から、ウォルターの体温が伝わってくるような気がした。
　二人は手に移った香りを楽しむ。やがて、ウォルターの眸は僅かに驚きを生む。

「香りが違うんだねえ」
「似たような見た目でも、意外と香りは違って楽しいよ」

　その説明に、ウォルターは熱心にハーブの葉を眺める。

「知らない植物だから成分まではわからないけど、効能もそれぞれ違うんだ」
「それはすごいねぇ」
「傷を治す薬効もあれば、虫除けや除菌なんかね。もちろん香りで落ち着いたり元気になったり、気分転換にもなるし……香りは記憶と紐付いているから思い出を振り返りやすかったりね」

　会話を弾ませるたび、ウォルターの笑顔や驚きがこぼれ落ちるのが楽しくて嬉しかった。

「みんなは、この植物の効能は知ってる？　ちょっと面白いことを試してみない？」

　柚春からの発案に、マジックポッド達は興味津々に集まってくる。
　状況を把握したマジックポッド達は二人を家に招いた。みんなで手分けして道具を探し、手際よく準備を整える。

「鍋に水を入れ、ザルをセット。ザルの上に葉や花を敷き詰め、中央に小皿を置く。鍋の蓋を逆さまにして、蓋の上に氷袋を置く」

　柚春は材料を吟味し、慣れた手つきで作業を進めていく。

「こうして蒸せば、香りを抽出することができるんだ」

　興味を引かれたマジックポッド達は思わず、前のめりになる。

「小皿に貯まったのが芳香蒸留水。ルームスプレーに使ったり、肌に触れて大丈夫なら化粧水や入浴剤にもなるよ」

　柚春は視線を庭園に巡らせる。

「鍋に残った水と植物は、庭に撒くと植物の栄養になって害虫やネズミ避けにもなることもあるから、みんなの役に立てるかも」

　柚春の説明に、マジックポッド達は小躍りした。
　マジックポッド達は意気揚々と香りを楽しむ。
　その様子を見ていたウォルターは微笑む。

「香りの力はすごいねぇ。ポット達は喜んでいるよ」
「気に入ってくれたのかなぁ。そしたら僕も、今日の思い出を持って帰れて嬉しいな」

　柚春は生き生きと幸せを噛みしめるように声を弾ませた。

「ポット達にとって、今日の体験は特別になったのかもねぇ」

　瞬き一つで世界の色を変えるように、彼の声は様々な感情を乗せている。

「もちろん……僕達もね」

　不意打ちを食らった柚春は、ウォルターから目が離せなかった。

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