マジックポットたちと、不思議な魔法の庭｜リアクション

マジックポットたちと、不思議な魔法の庭

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「……ここはどこ？」

　梓智依子は娘の楓の手を引きながら、周囲を見回す。
　見渡す限り、どこまで続いているのか分からない広い庭。
　そこかしこで色とりどりの花達が、可憐さを競い合っている。
　しかも、見たこともないような花も、たくさん咲き誇っていた。

「ママー、あのおはな、なあに？」
「そうね。不思議なお花ね」

　目新しい花を見つけてはしゃぐ楓に聞かれても、初めて目にする智依子は返事に困ってしまう。
　しばらくの間、適当に花を眺めていたその時、不意に何かが動く気配を感じ、振り返る。
　そこには四本の足がついたマジックポッド達が歩いていく姿があった。

「ティーポットが歩いているの？」
「すごーい！」

　目を丸くする智依子とは対照的に、楓は面白そうにとてとて歩くマジックポッド達を見ている。
　よく観察すると、マジックポッド達は花壇に近づいて水をやりだした。

「もしかしてお花の世話をしているの？　でも、こんな小さな体では大変そうね」

　庭園は果てしなく広い。
　しかも、小さなマジックポッド達が、運べる水の量はほんのわずかだ。
　庭の花達へまんべんなく水をやるには、何度も往復しなければならないだろう。

「楓、お花にお水、あげましょうか？」

　智依子の提案に、楓は大喜びで「うん！」と言った。

「でも、おみず、どこにあるのかな？」

　楓は少しの間、忙しなくそわそわと辺りを見渡していた。
　やがて、小さな手は元気よく、不思議な雰囲気を醸し出す家を指さす。

「ママ、見て！　あれ、なにかな！」
「お家みたいね。行ってみる？」
「いってみたーい！」

　楓が家を見てはしゃいでいる。
　そんな愛しさに溢れた愛娘の姿を見つめて、智依子は微笑んだ。
　家に近づくと、じょうろがいくつか置かれていた。
　状況を察したのか、マジックポッド達が智依子のもとにやってくる。

「じょうろを借りていい？」

　智依子がじょうろを示すと、マジックポッド達が喜びを体現するようにぴょんぴょんと跳び跳ねた。どうやら、自由に使っていいみたいだ。

「うーんとね……」

　楓の目の前には、様々なじょうろ。
　たくさんあるので思わず、目移りしてしまう。

「ママー、これ！　にゃんこ、かわいいー！」
「じゃあ、これにしましょうか」

　楓が選んだのは白猫の絵柄がついた可愛いじょうろである。
　二人がじょうろを選ぶと、マジックポッド達はお水がある場所まで導いていく。

「楓、ここで水を入れて。花壇まで運んでいくわよ」
「うん！」

　じょうろを手に喜ぶ楓の姿を見て、智依子の胸に温かさが満ちていく。
　家から花壇までの往復作業。
　二人は水が入ったじょうろを運んで、花にあげていった。
　マジックポッド達がまだ、やっていない花を中心に水をやっていく。
　花壇は水の輝きに満ちていてまぶしかった。

「うわ～、キラキラおはな、いっぱい」

　楓は小さな体でじょうろを持って、一生懸命、水やりしていた。
　楓の愛らしい姿を見て、智依子は思わず笑みがこぼれる。
　そんな風にして庭の手入れを手伝ったことで、庭園はすっかり綺麗になった。

「ママ、たのしかったー」

　楓も、すっかりご満悦の様子だ。
　すると、マジックポッド達が家に来てほしいと招く動作をする。
　どうやら、お礼がしたいようだ。
　マジックポッド達に誘われて、二人は家の中に入る。
　すると、思わぬ光景が飛び込んできた。

「わぁ、クッキー！」

　楓はぱあっと声を弾ませる。
　マジックポッド達はお茶と様々な形のクッキーをごちそうしてくれたのだ。

「ママ、おいしいー」
「そうね」

　智依子は今日の鮮やかな思い出を噛みしめる。
　楽しかった想いも、幸せな気持ちも、きっと二人とも同じなのだから。

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