ふくびきやの憂うつ｜リアクション

ふくびきやの憂うつ

　響蒼留人は目を瞬かせた。
　そこはどこかの学校の教室だった。
　よく覚えていないが、とあるば場所でふくびき屋なる店を見つけたのだ。
（そういえば、なんかふくびきをしたんだっけ）
「ん？」
　不意に複数人の女子生徒がわらわらと入ってきたというか、それに続いて入ってくるのも全員女子だ。どう見ても男子がいない。
「でさー」
「えーほんと～？」
「ねー、次の授業って何？」
　体操服の女子達は蒼留人に構わず、自分の机の前で体操服を脱ぎ始めた。
「うえ！？」
　ピンクやブルーの……薄い布がしっかりと。
　蒼留人の声に女子達が一斉にこちらへ向いた。
　そして一斉に、
「「「「きゃああああっ」」」」
　悲鳴が上がった。
「ち、違うって、そもそも、最初から俺がここにいたのに気付かずに」
　と、体操服で胸元を隠しながら近づいてきたのは委員長らしき、眼鏡の女子。地味な感じではなく、かなりの美人だ。
「さっさと出て行って。何考えて、と、あっ」
　何もないところに躓いた、ように見えた。
　不可抗力である。
　彼女は胸元を隠していた体操服を床に落とした状態で、蒼留人に体当たりをしてきたのだ。
「ぶはっ」
　なんというか、埋まった。控えめな双丘に。
「むぐっ、むぐうっ」
「うう、もうっ、男子一人だからって、ルールは守って」
（いいから、退いてくれーっ）
　ようやく委員長が退くと、女子に囲まれていた。何故か皆体操服で胸元を隠すスタイル。ちらちらと色々見えている。
「あ、あー……。すみませんでしたぁ」
　女子達をかき分け、慌てて廊下へ出る。
「はあ、驚い…」
　壁に手をつくつもりが、ふにゃんとした感触にはっとする。
「響君」
　そこにいたのは、女性の教師。ミニスカートのスーツ、ブラウスの上から鷲づかみにしていたのは彼女の丸みを帯びた二つの、
「あ」
　混乱して、ふにゃふにゃと揉んでしまってから教師が顔を真っ赤にしていることに気づく。
「君、堂々と先生にセクハラするのね」
「すみませんっ」
　慌てて、後ろへ飛び退くと、誰かにぶつかってしまい、
「きゃあっ」
　一緒に倒れ込む。
「わ、悪い」
　押し倒す形になった女子生徒は、何故かスクール水着姿だった。
（つ、次から次へとっ）
　まさにエッチなハプニングである。
　どうにか体をおこした時である。
「やあやあ、ダークネスサン・マーだよ！」
　声をかけて横へ視線を向けると、真っ黒なサンマが声をかけてきた。口元が不気味に歪んでいて、常に笑みを浮かべているような。
「は、何」
「夢のハプニングも消えろ～」
　ダークネスサン・マーと名乗ったサンマがそのまま姿を消す。次の瞬間には、男性用の水着を着用したむきむきの男性が恥ずかしそうにしていた。
「いや、そる君。さすがにいきなり廊下で押し倒されると困るよ。い、嫌ではないんだけどね」
「……！！」
　さっきまで男の姿など皆無だったのに。見渡してみれば女子生徒がすべて男子生徒に変わっていた。
「捕まえた！」
「はい？」
　振り返ると、後ろからメガネの男子生徒に抱き締められていた。ぞくりとした。男子同士ではあるのかもしれないが、友人でもない他人に抱きつかれるとは。
「やめろ！」
　振り解いて、突き飛ばそうとしたのに、手が胸元へ。固い胸板の感触が伝わってきた。
「あっ」
　妙な声をあげるメガネ。
「う……うあああっ」
　蒼留人は悲鳴を上げながら走り出す。悪夢過ぎる。
　と、逃げたサン・マーの後ろ姿が見えてきた。何故か近くに落ちていた木刀を拾い、
「食ってやるからな！」
　蒼留人は木刀を振りかぶって、サン・マーへ渾身の一撃。視界がぐにゃりと歪む。元の世界にもどれるのかもしれない。
（食ってやろうと思ったのにな）

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