異世界駅からの脱出｜リアクション

異世界駅からの脱出

【エピローグ】
　気づくと信彦は、規則的に揺れる列車の中にいた。
　すぐには状況が飲み込めず、あたりを見回していると。
「次はシーサイドタウン駅。お降りの方は――」
　と車内にアナウンスが流れる。
「戻って来られたんだな」
　ホッと呟いて彼は、スマホで時間を確認した。約束の時間には、充分余裕がある。
「連絡もなく彼女を待ちぼうけさせずに済んで、ラッキーだ」
　ふっと笑って彼は、車内をドアの方へとゆっくり移動した。

　ふいに大きく揺れて、タルトはハッと目を覚ました。
「あ……れ……？」
　慌ててあたりを見回す。
　車両には大勢の乗客がいて、皆思い思いに過ごしている。
「戻って来れた？」
　それを見やって呟くと、タルトは慌ててスマホを見る。アンテナはちゃんと立っていて、日時は今日のものだった。
「よかった～、何十年後とかじゃなくて」
　ホッと胸をなでおろし、彼女はさっそく、SNSに自分の体験を書き込み始めたのだった。

　ふいに目の前が暗くなったような感覚があって、アリサは小さく息を飲んだ。
　だが、すぐに明るくなると同時に、規則的な振動が体に伝わって来る。
　車内には、同じように電車に揺られる乗客の姿があった。
　窓の外には、明るい緑と赤や黄の花々が咲き乱れる春の景色が広がっている。
「次は鎌倉。次は終点、鎌倉です。お降りの際には――」
　アリサがぼんやり外を眺めていると、アナウンスが流れた。
「戻って来られたのね……」
　その声に、彼女はようやく呟いて、深い溜息と共にシートに身を預けたのだった。

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