寝子島マリンパラダイス、激カワ☆ベビーラッシュ！｜リアクション

寝子島マリンパラダイス、激カワ☆ベビーラッシュ！

梓智依子は娘の楓の手を引いて、マリンパラダイスの入り口をくぐった。
「わぁ～」
　薄暗く、非日常な光景に楓が嬉しそうにきょろきょろとする。ここにくるのは去年以来なので新鮮なのだろう。
　と、楓の手が離れてしまった。
「あ」
　とことこと歩み寄ったのは、円形の水槽だ。群れの小魚が優雅に泳いでいる。
「見て見て、凄い。えっと、竜巻？　みたい」
　螺旋状に群れている光景は圧倒される。
「ぐるぐる周ってるわね」
「目が回らないのかな？」
「どうかしら」
　そう笑顔で言ってから、
「楓、ママから離れちゃダメよ？　一緒に行くから手は繋ぎましょ」
「あ、うん。ごめんなさい」
　智衣子は楓の頭を撫でつつ、奥へ進むことにした。
「うわ～、お魚いっぱい」
「もう少し静かにね」
　窘めつつ、ペンギンの赤ちゃんの公開スペースへ。
　飼育員のそばに親ペンギンと一緒にヒナがよちよち歩いている。灰色の産毛が特徴的。
「可愛い、可愛い！　ふわふわだ～。ペンギンのママと似てないね？」
　産毛で覆われた赤ちゃんペンギンは確かに親子には見えないが。
「大きくなると似て来るのよ」
「……」
「楓？」
「楓もそうだった？　ママに似てなかった？」
　智衣子は少し考えて、
「楓は、ママにそっくりだったかも」
「えへへー、そうなんだ」
　非常に嬉しそうである。
「他の赤ちゃんも見たい！」
「そうね。色んなところを回りましょ」
　六年前、十四歳で楓を産んだ時のことを思い出した。ペンギンのママも自分と同じ思い。ヒナのいる卵を産み、それを返している間、卵の中で育っているヒナに会いたいと思っていたのだろうか。
　そんなことを思っていると、楓に手を引かれた。
「ママ、楓からはなれないでね！」
　いたずらっぽく言われて笑ってしまった。
　その後、マリンパラダイス内を見て回り、イルカショーを堪能した後、夕暮れに二人で帰路についた。
「かえでも、大人になったらママになるの？」
「そうね」
　微笑みながら答えると、やはり少し嬉しそうだ。
（私より早く産むってことはないような気がするけど）
　智衣子は遠い目をして、夕日に目を細めた。

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