家族がたり　春風｜リアクション

家族がたり　春風

●私の両親、あなたの両親

　早川珪とドライブデート中。車窓を眺めていた綾辻綾花の目に家族連れが留まった。
　父親と母親と間にいる小さな女の子は、両親と手をつないで嬉しそうに笑っている。
　そんな親子の仲睦まじい様子を見て、私もいつか……と早川先生との将来を想像した。
「外に何かあったのかい？」
　綾花が何か見ているようだったので、珪は気になったようだ。
「仲が良さそうな親子がいたんです。そういえば、珪さんは、まだ私の両親に会ったことは無かったですか？」
「綾辻さんのご両親？」
　会ったことがあったか、なかったか。
　思い出してみたが、会ったことはないので「会ったことはないな」と答えた。
「綾辻さんのご両親は、どんな人なのかな？」
「私の両親ですか？」
　両親のことを知ってもらう良い機会、と綾花は語りだす。
「2人とも市役所に勤めていて、優しくて真面目な人です。小さい頃から怒られた記憶はないです」
　優しくて面倒見が良いのは、両親の愛情を一身に受けて育ったからなんだろう。
　そう思いつつ、珪は続きを聞く。
「私が本好きなのは両親譲りです。休日に図書館と本屋さん巡りはよくしていました」
「本好きなのは、ご両親譲りなんだ」
　家族で本の話をしたりしているのだろうか、と珪は綾花と両親の会話を想像してみる。
「たまに、動物園とか水族館とか行ってました。でも、その後に本屋寄って帰ることが多かったです」
　笑顔で、その時のことを思い出して話す綾花を見て、家族仲はいいんだなと思う珪。
「仲が良くて、喧嘩してるのは見たことないです。いつか両親のような夫婦になるのが目標です」
　私もいつか珪さんと、そんなふうに……と続けたかったが、気恥ずかしいのでやめた。言うのをやめた。

「珪さんのご家族はどんな方なんですか？」
「僕の家族かい？」
　青森に住んでいること。
　春に寝子島に来るということは聞いたことはあるが、どのような性格かといったことは知らない。
「今は青森にいる両親だけど、転勤が多かったから仕事人間だったかな？　厳しい人達と思われそうだけど、両親は優しかったよ」
　そのせいで、珪はあちこちと転々としていた。
「転勤が多かったけど、両親は、どこででも上手くやっていたみたいだったよ」
　珪が優しく、社交的なのは、そんな両親を見て育ったからなのかもしれない。
「そうなんですね。いつか、珪さんのご家族に会ってみたいです。そして……」
　会ってみたいという思いを打ち明けた後、ちょっと照れるが、笑顔でこう伝えた。
「私もいつか、珪さんと家族になれたらいいなって思います」
「そうなったら、綾辻さんの家族みたいに本の話が多いかもしれないね」

　珪と家族になったとしたら、自分の家族のようになるかもしれない。
　そう思うと、ちょっぴり嬉しくなる綾花だった。

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