双界の決戦　――界喰らいのグラトニエル――｜リアクション

双界の決戦　――界喰らいのグラトニエル――

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( 'ㅅ')＜ちょっと私達と遊ぼうか

　ドヤ顔（？）のウサギさんと、無表情のスピカから放たれるは継続ダメージを与える茨の棘『イバラスパイク』と派手に炸裂する『パンプキンボム』。そして、スピカが放つのは氷のビットと凍結の概念を拡大解釈し凍らせる強力な魔法、『氷結の理』である。
『煩わしいわねぇ……』
　黒い靄で己を覆い、守ろうとするグラトニエル。だが、その靄すら炸裂するカボチャに散らされ、どんどん凍っていく。
（でも、手ごたえがない。多分、時間稼ぎにしかならない）
　スピカは内心焦った。それでも、ウサギさんと共に時間稼ぎに専念する。
（ここは援護を優先しよう）
　夏朝は、風の魔法を封じたスクロールを使い、魔法の効果を上げる。
　３人の魔法使いは、短い時間ながらもグラトニエルを押さえつけようと奮闘した。

「今回は弓を使う軽戦士が複数いる。『投げる』って面白いスキルを持つ人もいるし」
「魔導士と治癒士が時間を作っている。その魔法が途切れたら一斉発射だ」
「合図はお任せを。……集中砲火して怯ませましょう」
　都と凜太郎の言葉に露草が頷く。
「……その隙に重戦士３人と私達が接敵すればいいかしら？」
　碧南が外の様子を伺いながら問えば、夏夜が「そうだね」と頷く。彼女は隠密系技能と暗殺技能を組み合わせ、大ダメージを与えられないかと考えていたのだ。
「観察して思ったが、グラトニエルはスキルを放つ前に必ず靄を膨れさせる。その大きさが技によって変わるように見えたな」
　グラトニエルを観察していた凜太郎は今までの戦闘を振り返りながら言う。それに二一を始めとする前線を張っていた面々は納得したように頷く。
「あと、スキルのリキャストタイムが今まで戦ってきた極天使や魔侯爵達より少し短いの。さすが女神様という感じかしら？　でも、スキルを無効化できたらリキャストタイムを長引かせられているかも？」
「それが本当なら、世界を喰らうのを完全に阻止できた場合暫くスキルを使えない状態にできるかもしれないね」
　二一の言葉に夏夜が目を僅かに見開く。
「だったら、尚更やる気でるねぇ！」
「重戦士の腕の見せ所、だね！」
「うまく連携すれば１度ぐらいはやれそうだ」
　瑠樹、真白、蒼留人の眼にやる気が漲る中、ちらりと露草が外を見ると夏朝がMP回復ポーションを魔導士２人に使っていた。そしてグラトニエルの周りにはわんさかと黒い靄が……。それで何かを悟った露草は表情引き締める。
「そろそろグラトニエルが世界を喰らうかもしれません。……手筈通りに」
　彼はさっ、と手を挙げ、重戦士組と夏夜、碧南が静かに動き出す。
　近づくグラトニエル相手に、スピカが窓の前で三度周囲を吹雪かせるべく詠唱をしていた。ウサギさんは夏朝から貰ったMP回復のポーションを飲みながら、樹木が生え枝で殴る『ウッドハンマー』を使っていた。グラトニエルはそれらを黒い靄で押しやろうと身を捩り、吹雪に押し出されるグラトニエルを黒い靄が包み込む。嫌な予感がした魔導士二人は一端呪文をキャンセルした瞬間、ビームが飛んできた。
（今だ！）
　露草が合図代わりに『投げる』で鉄球を投げる。ウサギさんはもう一度MPに持続ダメージを与える『ヤドリギドレイン』を使い後退。スピカは己に飛んできたビームを『ドッペルスノウ』で回避。
「リンタロウ！」
「わかっているっ」
　叫ぶスピカに、凜太郎が弓を構える。そこに並ぶは都と露草。３人は弓とスキルでもって建物内にあった魔力の籠った矢を何本もグラトニエルへと放つ。
　魔力の籠った矢は黒い靄を少しずつ削っていく。靄が矢を払おうとするが、それよりも早く矢が靄を消していく。
　グラトニエルが矢に手を煩わせている間に、二一と碧南、夏夜が駆けつけていた。
（ダメージを喰らうのは覚悟の上だっ）
　夏夜は、その気配すら悟られぬ素早さで強力な一撃を叩き込む。それに合わせ立ち上るは触手。二一が使った巻物によって召喚された物だ。
　碧南は靄を手にしたレイピアで払いのけ、時間を稼ぐ。
（あと２人……！）
　彼女が振り返ると、蒼留人が『必勝の剣』で同じように靄を切り払う。そして、少し離れた所ではじけるような音。瑠樹が猫モチーフのピコハン……もといウォーハンマーを叩きつけ、その風圧を壁のように展開し靄に抗っていた。
「これなら、ノックバックで寄せる必要ないかな？」
　真白がウォーハンマーでグラトニエルを叩きつけた途端、黒い靄が霧散した。そこから現れた悔し気な顔から、スキル発動の阻止が出来たようだ。
『よくも食べる邪魔をしてくれたわね……』
　グラトニエルの表情から、余裕が消えた。それが何を意味するのか……その時の冒険者達は、予想できなかった。