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真紅の月
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西部劇のガンマンのごとく向きあって、紅美の言うように『どっちが早いかためした』場合であれば、錐状の刃はエレノアの首を貫いていたかもしれない。
しかし状況が異なる。逆上したのは紅美、この動きを読んでいたのはエレノア、どちらが有利かは自明だ。
「アイスピック、お気に召したようで何より」
軽く笑ってエレノアは後方に跳び、同時にペットボトルの中身をぶち撒けたのだ。
少量の水しか出ない水鉄砲とちがい、ペットボトルの中身は一瞬だが広範囲に広がる。
エレノアにとって水は武器である。彼女は液体を強力な瞬間接着剤に変化させることができる。
放射状にひろがった水はまたたくまに強力な接着剤となり、浴びた紅美と地面、その両者を固めた。
言いかえれば紅美をその場に釘付けにしたのである。
「予告しましたよね? 水鉄砲は私にとって武器だと。まあ、『鉄砲』ではなく『水』の部分がメインだったわけですけどね」
エレノアは水鉄砲を紅美に浴びせ、拘束をさらに強固なものにする。
全身しとどに濡れたため彫像のようになりながら、それでもなお、紅美は噛みつくようにうなり声をあげた。
「おっと、元気が良いですね。月がこんなに紅いから?」
「ころす!」
聞き流してエレノアは、紅美をしげしげと観賞する。
「ああ、この雰囲気は二重人格的な何かですね。どうやら貴方は、芋煮紅美さんの願望を実現するためにあらわれた第二の人格のようだ。そういうの私の好物なんですよ。そういえば寝子島って多いですよね二重人格、風土精神病かな? ハハ!」
エレノアは笑った。露悪的に笑ってみせたのではない。本当に、心の底から笑ったのだ。
年々息苦しさを増し相互監視社会への道のりをたどるニッポンの風潮とは無縁のように、寝子島は開明的だ。国の法律とどう折り合いをつけているのかは知らないが、同性婚と選択的夫婦別姓を正式に認めた進歩的な自治体でもある。それ自体は結構なことであろうし、リッカルド町長の英断(独断?)についてもエレノアとしては別段反対するものでもない。
けれど光が強ければ影もまた濃くなるのが必定。国全体、いやさ世界全体を覆いつつあるうっすらとした澱(よど)みどころではなく、この島には煮こごりのような、急進が産み落とした腫瘍があるようにもエレノアは思う。二重人格者が寝子島に多いこと、これもまたその顕現ではなかろうか。
逆説的かもしれないが、腫瘍があらわれることもまた、健全だとエレノアは思うのである。少なくとも、封じ込めたり無いことにするよりよっぽど健康的だ。
なるほど紅美の第二人格――エレノアからすればより素直なほう――は『クラン=G』の娘の外国行きを妨害するため彼女のパスポートを盗んだわけだ。それは理解できた。
だからといって、決定的に有効な手段ではないとエレノアは思う。
「でもねパスポート、そんなもの奪ったところで意味はないと思うんですよ。たいした時間稼ぎにもならない。すぐ再発行できちゃいますから」
彼女にはどんな爆発力があるかわからない。紅美に近づきすぎないようにしながら言った。
警戒したのは正解だ。紅美は動く首をめぐらせエレノアに頭突きしようとしたからだ。
「まあまあ落ち着いて、お姉ちゃんが貴女の悩みを聞いてあげますからね。私は貴女の味方ですよ、そのアイスピックをプレゼントしてあげる程度にはね、ハハ!」
声を上げてエレノアは背負ったナップザックを下ろした。
「たとえばそのパスポートの持ち主の保護者が、ちょっとこう、飛行機に乗れる状態でなくなれば、渡航は延期になるかもしれませんね? 打ち所、失礼、状態によっては、延期どころか中止になるかも」
重かったが持ち歩いておいてよかった。ザックからネイルハンマーを取り出す。金属製、握りにはゴムの滑り止めがついている。ホームセンターで普通に購入できるものだ。未成年であっても。
「アイスピックは目立つでしょう? これ、差し上げます。この道具はね、強い信頼関係で結ばれたふたりの仲を短期間で引き裂きたいときに振るうものなんですよ、ハハ!」
紅美の足元にハンマーを置いた。ごとりと硬い音が立った。
「原因は根本から解決しなくっちゃ? どうぞ、遠慮せず使ってください」
紅美は何も言わない。しかし視線は、エレノアではなくネイルハンマーに注がれていた。
十分だ。
また新たな種が撒かれた。
「ああそうそう、やった後は笑顔を忘れずにね」
言い残し、エレノアは来た道を引き返す。
ろっこんを解除するのはもう少し先、紅美が見えないほどの距離になってからだ。
守るための人格が主人格を追い詰めるだなんて、私好みの笑えるジョークです。
ジョークは笑うためにある。たとえ悲喜劇[トラジコメディー]であろうと、笑えるのならば価値は高い。
結果がどうなったかは、いずれ耳に入ってくることだろう。
「何か美味しいものでも食べてから帰宅しましょうか」
エレノアはつぶやいた。
いい散歩だった。
いい出逢いもあった。
紅い月はエレノアの足元に、血だまりのような影を生み出していた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
ホラー
オールジャンル
定員
10人
参加キャラクター数
11人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2024年06月13日
参加申し込みの期限
2024年06月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2024年06月20日 11時00分
参加キャラクター一覧
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