寝子島シーサイドアウトレット　スプリングセール｜リアクション

寝子島シーサイドアウトレット　スプリングセール

◆心の栄養

　八神修は七夜あおいと待ち合わせて寝子島シーサイドアウトレットにやってきた。

「寒くないか？」
「大丈夫だよ、ありがとう」

　春に向かっているとはいえまだ２月。天気は良好だが気をつけるに越したことはない。

「今日は何を買うの？」
「特に決めてないよ。小さい消耗品なら買うかもな」

　修は引越しが控えているので大きなものは買わないつもりだ。それはあおいも同じだった。

「でも見るのは心の栄養だからさ」

　修が爽やかに笑って言うと、あおいもほほ笑んだ。アウトレット内は人々の熱気であふれていた。それに圧倒されつつ、できるだけ人のいないところを縫うように進む。
　そうして流れ着いたのは雑貨屋だった。店内は他の客もいるものの、外で見た人混みを思うとだいぶ緩やかな流れだった。動物をモチーフにしたものが多く、雑貨だけでなく食品も扱っている。

「お、これは」
「なにか見つけたの？」

　修が手にしたのは猫顔の瓶に入った、猫の形をした角砂糖だった。他にも猫型のマシュマロなども売っている。

「修君、可愛いもの好き過ぎでしょ？」
「学校の皆には内緒だよ」

　これくらいなら荷物にならないだろうと思い、マシュマロだけ購入した。退店後もしばらくアウトレット内を散策していた２人だったが、人混みと熱気でだんだん暑くなってきてしまった。

「あおい大丈夫？　疲れてきてない？」
「ちょっと疲れてきた、かも」

　修はあおいの様子を見つつ、starboxsまで連れていった。ここも人で賑わっているものの、テーブルで人同士が離れているからか幾分風通しが良い。

「どれにしようか」
「あ！　季節限定フラペあるよ！」
「メロンか、いいね」

　２人ともその限定フラペチーノを買ってテーブル席に座る。

「ひんやりしてておいしい！」
「だな。それにメロン果肉がごろごろだ」
「すごくメロンって感じがするね」

　冬に暖かい場所で冷たいドリンクを楽しむ贅沢。この３年で修はだいぶ庶民的な感性を身に付けたようだ。あおいに寄り添ううちにそういった感性に共感するようになったのも大きい。
　２人はフラペチーノ片手にこの後どこへ行くか相談したり、ここには色々あって楽しいとか、他愛のない話題に花を咲かせる。

（色々なものと言えば）

　修はふと時空の歪みによって生まれた店であおいのブロマイドが大量にあったことを思い出す。そのときは修が全て買い占め、その後すぐに破棄した。

「どうかした？　何か考え事？」
「いや、神魂はたまに困ることをしてくるよなあと思ってね」

　例の騒動のことを話すと、あおいも覚えていた。

「また起こっても、あおいが望むなら流出は断固阻止するよ」
「ありがとう」

　あおいを守りたい。守らせてほしい。その真っ直ぐな気持ちから出る言葉は力強い。

「大丈夫。何が起こっても俺がいる、だろ」

　修はにこやかにほほ笑んだ。

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