寝子島シーサイドアウトレット　スプリングセール｜リアクション

寝子島シーサイドアウトレット　スプリングセール

◆一緒に買い物

　綾辻綾花と早川珪先生は寝子島シーサイドアウトレットへ買い物にやってきた。綾花は大学合格も決まり、あとは卒業を待つばかりなのでこうして彼と出かける機会が増えて嬉しい。

「今日はどこに行きますか？」
「そうだな」

　綾花が彼の手を握ると、彼もそっと握り返した。今日はどのテナントでもおおむね大幅値引きが行われているから、掘り出し物も見つかるだろう。もちろんそれらも探したいが、綾花はただ手を繋いでアウトレット内を巡りたかった。
　それに自分の目的だけでなく珪先生の行きたいところも気になっている。

「珪さんのこと、もっと知りたいです」

　口にしてみると、少し恥ずかしかった。
　すると彼はつないだ手をゆっくり引いて、シューズ専門店である『キャットスター』に向かった。どうやら新しい靴を買いたいらしい。そこで一緒に靴のデザインを見比べたり試し履きをする。そうして決めた靴を購入すると、今度は綾花の希望でニャレッジヴァンガードに行くことにした。
　ここは雑貨と書籍の複合店舗、いわば遊べる本屋さんだ。珍しい本や雑貨が揃っているので綾花は興味津々。

「あっ、これ時短になりそう」

　色々と並ぶ中で綾花の目に留まったのは調理グッズ。実際に手に取って使い勝手がいいかどうか確かめる。こういったものはデザインだけでなく、普段使うのに向いているかどうかも重要だ。

「なんだか慣れた手つきだね」
「最近、料理をすることが増えたんです」
「へえ、そうなんだ」

　感心する彼の声が少しくすぐったい。綾花は近くにあった料理本を手に取った。

「寮でも作ってるんですけど、卒業して一人暮らしになるので栄養学の勉強してるんです」
「なるほど、えらいね」
「ありがとうございます。バランスのとれた食事は大切ですから」

　他の料理本もいくつか見比べてから１冊に決めて購入した。

（いつか珪さんに手料理食べてほしいな。やっぱり美味しいって言ってほしいですね）

　そんな気持ちを胸に店を後にした。それから２人はstarboxsでコーヒーを頼むとテーブル席に腰掛けた。

「珪さんは食べてみたい料理はどれですか？」

　さきほど購入した料理本を２人で眺める。これが美味しそうとか、これが食べてみたいと話している。

「珪さんが食べてみたい料理はどれですか？」
「そうだね……これかな」
「なるほど！　練習しておきます。楽しみにしててくださいね」

　その言葉に珪先生は嬉しそうに頷いた。

（一緒に作るのも楽しそうです）

　レシピを眺めながら綾花は微笑んだ。

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