【卒業生を送る会】未来へ向かってバイバイバイ♪｜リアクション

【卒業生を送る会】未来へ向かってバイバイバイ♪

　ダンスタイムが始まると、自然と英二はののこと向かい合いました。
「卒業パーティだし、踊ろうよ、英二くん」
（確か在校生の時も踊ってたけど）
　英二はそう思いつつ、ののこの手を取りました。
　ののこはおとなしくリードされてはいません。
　急にスピードアップしたりターンしたり、大げさな動きをしたり。
　振り回されるので気は抜けませんが、楽しそうな笑顔を見ていると飽きないのでした。
「野々さん、今日は楽しめた？」　
　話している間は急な動きはしないので、英二は話しかけます。
「うん、とっても♪　英二くんは？」
「僕も、とっても楽しいよ」
　一曲踊ると、ののこは手を振って次の相手を探しに行きました。

（待ちくたびれました……義弘先生、エスコートしてくれるでしょうか）
　ドレス姿の智瑜は、ようやく現れた義弘先生に声をかけました。
「先生、来てくれたんですね」
「すまない」
「先生の好きなものはどれですか？」
　今後作るかもしれないしチェックしておきたい、と思う智瑜です。
「……立場上、好きなものばかり食べているわけにもいかないのだが。なくなる前に肉も食べておきたいな」
「はい、どうぞ」
　智瑜は肉を取り分け、義弘先生が食べるのを見届けてから自分も同じ料理を口に運びます。
「美味しいですね」
「……ああ」
　智瑜をちらりと見た後、横を向いてしまう義弘先生。
　けれどその場を離れようとはせず、そのまま挨拶に来た生徒と会話を交わしているのでした。

「前から先輩のことが気になっていました……僕と踊ってくれませんか？」
「……ごめんなさい」
　何度目になるでしょうか。
　智瑜は男子からのダンスの申し込みを断り、その場を離れました。
　そして、少し離れて視線を送っていた義弘に近づいて。
「義弘先生、踊りませんか？」
「……ああ」
　どこかぎこちなく、けれど義弘はしっかり智瑜の手を取り、踊り始めました。
「ドレス似合いますか？」
「ああ」
　胸元を大胆にあけたドレスで、智瑜はステップを踏みます。
　たゆん。
（ダンス中は揺れやすいのが困ります）
　チラチラと感じられる義弘先生の視線を追うと、先生は慌てて胸から目をそらしました。
（チラ見じゃなくてじっくり見てくれても良いんですよ。もちろん見せたいのは義弘先生だけなんですから）
　そう心の中で呟いて。
　先生とダンスが出来て夢見心地になりながら、智瑜は囁きます。
「沢山の人から告白されちゃって……断るの大変だったんですよ」
「何？」
　少し義弘の顔に動揺が走りました。
　男性たちには、智瑜の指は目に入らなかったようですが。
　誕生日に先生からもらったおもちゃの指輪を、しっかり智瑜は左手の薬指にはめていました。
「私の好きな人は義弘先生だけです」
「……！」
　先生の耳元で囁くと。
「卒業したらちゃんと返事くださいね」
　にっこり微笑んで。

　ダンスの曲が変わり暗くなった時、智瑜は義弘を抱きしめたのでした。